大正ロマンを代表する画家・竹久夢二の生きざまを描いた映画「夢二~愛のとばしり」が、7月30日(土)より公開される。本作が映画初主演となる駿河太郎が夢二役を熱演。そして多くの恋愛遍歴を持つ夢二が、“最も愛した女”といわれる彦乃(しの)を小宮有紗が演じている。
今作は明治、大正、昭和の3時代を生きた夢二を、男としての悲しくも愛ある姿を捉える。自身の作品のモデルにもなった妻・たまき(黒谷友香)との決別、彦乃との逃避行の行く末など、夢二が駆け抜けた時代を忠実に再現。彼に翻弄(ほんろう)された女性たちの姿を通して、人間としての夢二の本質をこだわりある映像美と共に描く。
今作では一人の女性が大人になっていくさまを体当たりで演じた小宮が、役作りについて、そして夢二という男の魅力を語ってくれた。
──彦乃の役どころについて教えてください。
絵を勉強している女学生が竹久夢二という芸術家に憧れ、(絵を売る)店に通う中で本人と出会い、お互い恋に落ちていきます。その恋を通して、どんどんと大人の女性になっていく。彦乃は育ちの良いお嬢さまという感じなのですが、なかなか知り得なかった外の世界や、夢二の妻・たまきとの関係から愛と憎しみを感じ取ったりと、いろいろなことを知ってしまうんです。
純粋な心でずっと夢二のことを愛し、引き裂かれ、しまいには若くして亡くなる悲しい役なんですけど…。彦乃を一言で表すなら「純真無垢(むく)」。本当に真っ白な子だと思います。
──今回の役を演じるに当たり難しかったことはありますか?
古い時代のお話なので、言葉遣いはもちろん、着物を着ながらの所作は難しかったです。たまきさんとは年齢や育った環境が違うので、同じ動きをまねするのではなく、違いを出さなければいけないですし。あと、普段は着物を着て過ごすという習慣があまりないので、常に姿勢良くしていようとか。役作りよりも所作を気にしていましたね(笑)。
──作中ではさまざまな着物を着ていましたね。
私が本編で着ている着物のうち、2点は今作のために特別に作っていただいたもので、使われている柄の一部は、夢二さんの実際の作品で描かれていた柄なんです。他にも、大正時代に作られて現存する着物を、衣装さんが探してきてくれました。
「その時代のものが、本当にすてきだから」と、衣装もリアルなものを用意されたことで、自然と役に入り込めるじゃないですけど、衣装を着たら(彦乃の)気持ちになれる。髪もカツラではなく地毛で結っていただいたので、その部分でもリアル感が出せましたね。
──実在した歴史上の人物を演じる上で、難しいことはありましたか?
竹久夢二という方を知らないと好きになれないので、たくさん勉強しました。都内にある美術館に通ったり、彦乃を描いた絵を見たり。本などの参考文献も探しましたね。怪しい古本屋さんみたいな、古書を扱うところにしかなかったですけど(笑)。
撮影が終わってからの話ですが、仕事で京都に行く機会があり、その時は夢二と彦乃が少しの間住んでいたとされる場所に実際に行きました。実は、彦乃が写っている写真が残されているんですけど、それが叔母にそっくりなんです(笑)。そういう写真が残っていたので、イメージはしやすかったですね。スタッフの方からも「彦乃に似ているね」と言っていただいたのでうれしかったです。
──小宮さんが思う竹久夢二の魅力は何でしょうか?
作品の中では夢二が女性に引かれて心が揺れているようにも見えますが、それは逆で、夢二のいつまでも子どもみたいな部分だったり、どこか危なげな雰囲気に女性が引かれていくのだと思います。何人もの女性を惑わしてすごいですが、悪気はないからやっかいですよね。悪気がないと、責めても心に残らないですし。
一方、彦乃は若くして亡くなってしまいますが、本当はたまき以上に芯が強く、大人になったら“肝っ玉母さん”になる素質はあったんじゃないかな。あまりにも心が広いし、(男性との)交際経験も少ない中で夢二のような男性と過ごせるって、ある意味天性のものかなと思います。
──駿河さんにお話を伺った際、「小宮さんが撮影中そばにいてくれたことで、彦乃的な母性を小宮さんに対しても感じた」と仰っていました。
本当ですか!? 撮影中、その役でいる時は自宅に帰ってもそのままなんです。もしかしたら、その時(今作の撮影中)は“彦乃”として生きていたからかもしれません。普段はすごくマイペースですよ(笑)。
──撮影中、共演者とはどのようなことを?
駿河さんとはたわいもない話をしていましたね。子役の子と3人で私が買ったグミをずっと食べていて(笑)。駿河さんの方は、私が少しでも芝居をしやすいように積極的に声を掛けてくださって、私自身すぐに現場になじめました。
──体当たりシーンも多かったですが?
私が恥ずかしがっていると駿河さんにも気を使わせてしまうので、私は普通を装っていました。実際に、私は何も気にせず伸び伸びとやらせていただきました。
──お年頃な女性を演じ多彩な演技をされましたが、今作は小宮さんにとってどんな作品になりそうですか?
撮影していた時は22歳になるかならないかという時期で、彦乃が過ごした年に近かったんですね。だからより身近に感じられたし、リアル感が出たのかなとは思います。今までは、いい意味でキャラクター性が強かった(役が多かった)のですが、やっと人間になれたなと(笑)。
短い間ながらも“一人の人生”を過ごすことができて、この作品を通して役者に対する気持ちも変わりました。「もっといろんな人を演じてみたい!」と思うようになりましたね。実在の人物を演じたのは今回が初めてだったから、ゼロから役を作るのではなく、(人物が)あるところに自分が“近づいていく”感覚も不思議でした。
──将来演じてみたい役柄や人物などありますか?
“戦う女性”のような、強い役に憧れますね。体を使ったアクションはやらせていただいているので、刀を使った殺陣などもいつかやれたらいいな。キリッとした、格好いい役をやりたいです。できれば人間で(笑)。
──最後に映画の見どころ、ファンの方へのメッセージをお願いします。
この作品は、彦乃という一人の女性が大人になっていくさまだったり、夢二とたまきの愛憎劇だったり、夢二とたまき、夢二と彦乃の関係性の対比などがしっかり描かれています。そして、作品の画もすごくきれいだし、(演出上の)光の入り具合など細部にもこだわっているので、純粋に“芸術”として楽しみながら見てください。
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