8月7日(日)に、甲斐バンド伝説のライブが33年の時を経て日比谷野外大音楽堂によみがえる! そのライブの模様をWOWOWライブで生中継することが決定した。
'74年にデビューした甲斐バンドは「裏切りの街角」「HERO(ヒーローになる時、それは今)」「感触(タッチ)」「安奈」など、'70年代後半に国民的ビッグヒットを放ち、'80年代にも「ビューティフル・エネルギー」「漂泊者(アウトロー)」「破れたハートを売り物に」など、多くの名曲を生み出してきた。
そんな彼らが'83年8月7日、新宿副都心の高層ビルに囲まれた都有5号地で、史上初となる大規模な野外ライブ「THE BIG GIG」を開催し、大都会のど真ん中で3万人を動員した前代未聞のライブは、今なお“伝説”として語り継がれている。
ことし8月7日、33年を経て伝説のライブが「THE BIG GIG AGAIN 2016」として帰ってくる。ただし、当時の都有5号地には現在東京都庁が建っているため、同じ場所でのライブはかなわず、今回は東京・日比谷野外大音楽堂に場所を移しての開催となる。
33年前と同じセットリストで臨むという、この一夜限りの貴重な公演をリアルタイムで目撃できるチャンスだ。このライブを目前に控え、甲斐よしひろにインタビューを敢行した。
――「THE BIG GIG」が行われた'83年頃はまだ野外フェスなどは多くなかったと思います。このライブをやろうと思ったきっかけは何ですか?
'70年代や'80年代に大きなイベントをやろうと思ったら、箱根(神奈川)みたいな広大な土地がある郊外に行かないとやれなかったけど、僕らは都心でやりたかったんです。その前の年('82年)にリリースした『虜-TORIKO』というアルバム、「THE BIG GIG」の直前にリリースした『GOLD』というアルバムのミックス作業を、ローリング・ストーンズやブルース・スプリングスティーン、ホール&オーツなどの作品を手掛けていたエンジニア、ボブ・クリアマウンテンに依頼してニューヨークでやってた当時、バンド自体がどんどん都市型へと移行している時期だったので、都心で大きなライブがやりたかったんだよね。
でも、都心でやるとなると、野球場とかになるんですよ。でも、それだと普通でつまらないから、せっかくやるなら街のど真ん中でやりたいよねって話をしていて、都有5号地で行うことに決めたんです。
――都有5号地は今、東京都庁が建っている場所ですが、当時はどういう場所でしたか?
ライブをやろうと決める前から、気になっていた場所でした。高層ビルが建ち並ぶ新宿副都心の中に広大な土地がぽっかりと空いてるわけですから。車であの辺りを通ると自然と目に入るんですけど、異様な光景でしたね。'83年の8月に本番をやることになるんだけど、実はその1年ぐらい前から計画はありました。でも、東京都の所有地だから、許可を得るにもいろんな部署をたらい回しされて、結局1年以上かかって、やっと許可が下りました。
そのために根気よくやってくれた人間がいて、それが今のイベンター、ディスクガレージのトップです。彼の苦労が実り、ようやく'83年8月7日にやれることが決まり、みんなが一生忘れないようなライブのネーミングにしようと思って、「THE BIG GIG」にしたんです。
'60年代や'70年代、イギリスではパブや小さなライブハウスで行うライブのことを「GIG」って呼んでたんです。日本では全然知られてなかったけど、ストーンズ関連の書物を読むと「GIG」という言葉がよく出てきていた。「あ、これいいな」と思い、3万人も集まるイベントだということを逆手にとって「BIG」を付けて「THE BIG GIG」に。
――「THE BIG GIG」は映像作品としてもライブの臨場感はもちろん、当時の新宿の光景がわかるという意味では、記録映画、ドキュメンタリーとしても高い価値があるように思います。
そうですね。ビデオからDVDに変わった今も「THE BIG GIG」が多くの人に見てもらえているのはそれも大きな理由の一つなんじゃないかな。
20世紀最大の素晴らしいものは高層建築だと当時から言ってたんだけど、高層ビルに囲まれた場所にステージがあって、そのビル群にライトを当てて間接照明みたいな効果でステージを浮かび上がらせるという発想は、撮った映像をいま見ても異常にキレイですよね。あの時代、あの場所でしか作れなかった唯一無二のものだと思います。
――セットリストはどのように決めましたか?
甲斐バンドとして最新のものを見せたかったから、ニューヨークでミックスした『虜-TORIKO』『GOLD』の曲が中心になってます。あと、3枚目のアルバム『ガラスの動物園』に入っている「東京の一夜」を、タイトルも含めてこのライブに合うからとセットリストに入れたんです。
原曲はちょっとフォーキーな感じなんですが、この日のためにエッジが立つようなサウンドにアレンジを変えて、オーディエンスの思いに応えようと。その日のエポックメイキングな曲になったと思います。
それと、ライブの一週間ぐらい前に日没の時間を調べて、「シーズン」という曲のタイミングで空が暗くなり照明を生かせるようにしたいと思ったりね。そういうふうに、スタッフとアイデアを練りながら作り上げていったんです。
――そして33年ぶりに、同じ8月7日に、タイトルも「THE BIG GIG AGAIN 2016」に進化して日比谷野外大音楽堂で野外ライブが行われます。
“野音”って人気が高くて、使用できるかどうか抽選で決まるんです。それを今回、33年前と同じ8月7日をイベンターが引き当てたんだよね(笑)。だったら同じセットリストでやろうと。
――セットリストを変えるという考えはなかったんですか?
同じセットリストでやっても、同じにはならない。時代も違う。オーディエンスも変化してる。「AGAIN」というのは'83年の「THE BIG GIG」を再現するんじゃなく、今の甲斐バンドが同じセットリストで(どういうライブをやるのか)を見てもらうっていう意味だから。
バンドは試されてるというか、非常に恐ろしいことをやろうとしてるんですよ。まぁ、面白いことでもあるんだけどね。
――ライブの日が近づいてきましたが、ステージのイメージは出来上がっていますか?
イメージはしてるけど、当日はフラットな気持ちでステージに出て行きたいから直前になったら全部忘れます(笑)。ライブはね、ハプニングも付きものだし、何が起こるか分からないからフラットな気持ちで柔軟に臨んだ方が美しいライブができるんです。
――'83年は3万人の前で演奏されましたが、今回は生中継でより多くの人がリアルタイムでライブを体感します。
本当は1日だけじゃなくて、2日でも3日でもやりたいんだけどできないからね、野音は(笑)。生中継をやってくれることで、全国津々浦々の人たちまでバンドの思いと音楽を届けられる。
まさに今の時代のアプローチだよね。生中継で、会場のオーディエンスと同様に全国の皆さんがハッピーで、それでいてハツラツとした気持ちになってくれたら最高だね。
8月7日(日)は、甲斐バンドにとって新たな“伝説”が誕生すること必至のライブだ。さらに、事前番組として「徹底解剖!甲斐バンド THE BIG GIG AGAIN 2016」を、8月2日(火)夜0時から無料放送する。
甲斐よしひろ独占インタビューや'83年の「THE BIG GIG」オリジナルライブ映像や当時の写真などが登場。8月7日のライブ前には必見の内容となっている。こちらもチェックしよう。
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