9月3日(土)に全国公開される映画「エミアビのはじまりとはじまり」で、漫才コンビ・エミアビのメンバーとしてW主演を務める森岡龍と前野朋哉にインタビューを行った。
前編では、2人の相性についてや撮影エピソードなど、さまざまなことを語ってもらった。
――台本を読んだ感想を教えてください。
森岡:最初に台本を読んだとき、実はどんな映画になるのか見えませんでした(笑)。演じる実道は、相方・海野(前野)が死んで途方に暮れたけど、やがて復活する。そこまでは分かったのですが、最初それが果たして面白くなるのか分からなくて(笑)。
クランクインするまで、どういう肌触りの映画になるのか読めずに悩みました。あとは漫才をどうしようかな…というのも悩みのタネでした(笑)。
前野:結構時系列がバラバラで進むので、僕も最初はどういう映画なんだろうかと悩みました。どこまでが現実で、どこからが回想なのか、そしてどういう感じに撮影は進むのだろうか…。その中で僕が一番印象に残っているのは、男たちに襲われるシーンですね。
シーンとしても長かったですし、台本を読んだときにここが僕の見せ場だなと思いました。「オナラで飛ぶ」って書いてあって、どういうことだろうってビックリしましたけど(笑)。これは現実なのか夢なのか…。台本を読んですぐに監督と会いたくなりました。渡辺謙作監督の世界、謙作さんワールドの何でもありの部分が面白いねって森岡くんともお話しました。
――撮影に入る上で、役作りのアプローチはどうされましたか?
前野:一カ月弱くらい漫才の練習したのですが、ほぼ毎日二人で会っていました。そこで劇中の関係性と同様に徐々に漫才ができていき、二人の信頼関係もできていったといいますか。
森岡:そうだね。僕は役をどうしようというより、まずは漫才がちゃんとできることに集中しました。脚本もどんどん変化していったので、とりあえずエミアビのネタを完成させよう!となり、漫才からキャラの肉付けが始まった感じでした。
前野:特に実道はそうだよね。
森岡:うん、海野以上に。
――お二人は漫才に初挑戦ですか?
前野:いえいえ、森岡くんは「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)の常連ですから!
森岡:いやいや、常連とか言うなよ!(笑) プロでやっている人みたいじゃん。
前野:そう?(笑)
森岡:僕は、あの…高校生のときに。はい。
前野:ちゃんと言いなさいよ!
森岡:友達と高校時代にM-1に挑戦したことがありますけど、新人みたいな気持ちですよ!
――漫才のコンビネーションはどうでした? 相方として息が合うな~とか思われました?
前野:息が合うな~は思いませんでした(笑)。
森岡:あ、それ前野くんも思ってた?(笑)
前野:うん、思ってた。
森岡:やっぱりね。僕も息が合うな~とは思わなかった。むしろ合わない方かもなあくらい。考えていることも真逆なんじゃないかってくらい。
前野:そうかな?
森岡:真逆は言い過ぎたかな?
前野:90度くらいじゃない?
森岡:そうだね。90度くらい違うなって感じは何となくしていました(笑)。
――人生観というか、演技へのアプローチの仕方も違うんですか?
森岡:違うと思います。
前野:そうかな。そこまで深い話はしていない気がするんだけど(笑)。
森岡:してないけど、僕は違う気がしたよ。やっぱり90度くらい。
前野:でも、だからこそお互いを知ろうとできたのかもね。最初からすっごく仲が良かったらさ、駄目だろうから。
森岡:確かに仲が良かったら関係性も違ったかもね。
前野:雰囲気が違ったかもね。結局、分からないですけど、僕も森岡くんと友達ってわけではないんですよ。同業者だし、お酒も飲んだりもするし、事務所も一緒だし…。
森岡:身内感はあるけど、仲がいいだけの友達じゃないし、かといって敵でもないんだよね。お互いがお互いにリスペクトしつつも意識している部分もあるし、絶妙な関係性なんでしょうね。
前野:そうそう、ライバル視もしつつね。たぶん大学生のころに出会っていたら、すごく仲良くなっていたか、超敵対視していたか、どっちかだったろうね。
森岡:そうだね。敵だったかもしれないなあ。
前野:「え? おまえ森岡組行くの?」みたいな。「前野組にこいよ~!」って仲間を引っ張り合ってバチバチしていたかも(笑)。
森岡:分かる!「何かあいつ一寸法師とかやってんな~」とかいってお互いの作品について罵倒し合っていたかもしれないね。
前野:確かに!(笑)
――お芝居の中で漫才するのは難しかったですか?
森岡:いや、それが逆に漫才師にならなきゃ!って意識が強かったので、漫才のシーンの撮影はいつも通りのテンションでいけるんですよ。「今日漫才だね~」って。
前野:ネタ合わせみたいにしてね。
森岡:ネタ合わせして、ぺぺぺって、さーてこんな感じでいくか~みたいな。
前野:いやいや、そんなにチャラくはやってないでしょ(笑)。
――確かにかなりのベテランのやり方ですよね(笑)。
前野:相当ですよ!
森岡:じゃあ、今日はBパターンでいこうか!みたいな(笑)。
前野:いや、今日は客層が違うからCパターンでいこう!って?(笑)
森岡:Cでいく? じゃあ、俺は前列のあの客をいじるわ!
前野:あの子ね。あの親子連れね!みたいな感じでね。
――そこまでくると完全に場慣れした人たちですよね。
森岡:まあ、そこまでじゃないですけど、気持ちとしては芝居部分よりも漫才部分の方がリラックスして臨めた気がします。逆に芝居の部分の方をどうしようかなって。お芝居って言われても、僕は漫才師なんですけど~みたいな(笑)。大げさに言うとそういう感じにすらなってしまいました。
――なるほど。では、特に今回難しかったところはどこですか?
森岡:僕的には、黒沢先輩(新井浩文)に追い詰められるところがものすごくキツかったです。精神的にも物理的にもキツかったなあ…。新井さんがそれこそお芝居でやっているのか、本気で僕に怒っているのかが分からないくらいでしたし、本当にドッキリだったんじゃないかと思いました。
前野:えっと、僕は漫才のシーンです(笑)。
――え! さっき…やりやすかったってお話をされていたはずじゃ(笑)。
森岡:もう~解散だ!解散だ!こんなコンビ!(笑) 今日で解散します!
前野:だって難しかったもん(笑)。リアクションがないから常に不安でした。森岡くんは他の取材でも言っていましたけど、漫才師としてこの映画の中で成立していればいい、めっちゃ面白くなくてもそこを守れれば最低限それでいいって。でも、
僕はそれもあるけど、やっぱりお客さんにウケないと映画はいけないかなと思っていて、自分で見ていてもお客さんにウケなきゃショックだろうから。
森岡:映画を見るお客さんに?
前野:そう、やっていることが面白いって思われたいなって思ったんですよ。
森岡:もちろんそれは僕もそうだよ。そこまでできれば最高なんだけど、じゃあそれが完璧に面白くないと駄目ってなっちゃうと、できないときにネガティブな方向になっちゃうじゃん。
でも、見ている人がウケるウケないは別にして、エミアビとしてちゃんと成立していれば、ネタはすべっていても映画はすべっていないっていうことになるかなと。そこは最低限守ろうよ、って思っていただけで、ウケなくてもいいって放り投げていたわけじゃないからね!
前野:分かってるよ~!そこまで言ってないじゃん(笑)。でも、ウケたか否かは撮っている時点では分からない。これから公開されてようやく分かるんだから。だからそこの、どう映るのかな、どう観客に受け止めてもらえるのかなっていう不安はずっとありました。芝居にはなかったけど、漫才にはそれがありましたね。
森岡:そっか、そういう意味では劇場でお客さんの反応を見たいよね。みんなにウケてくれているか。
前野:でも、それはすごく怖いよ。何か芸人さんの気持ちが分かるよね。ある意味では芸人さんよりハードだけど。もう完成しちゃっているわけだから。
森岡:そうだね。どうあがいてももう変わらないわけだからね。「止めてー!」って言っても止まらないし。
前野:「ちょっと待って~!」ってできないからね。
【“エミアビ”対談!前野朋哉はお金を浴びたい!? へ続く。同記事は9月4日(日)朝7時掲載予定】
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