'07年、俳優集団D-BOYSによる演劇ユニット公演として立ち上げられたDステ。そのDステ19th「お気に召すまま」が、10月14日(金)より東京・本多劇場ほかにて公演される。「ヴェニスの商人」('11年)、「十二夜」('13年)に続く3部作の完結編として描かれる今作で、シェイクスピア作品初出演となる遠藤雄弥にインタビュー。作品に懸ける思いから衝撃的なビジュアルの印象、さらには将来の目標まで語ってもらった。
――今作での遠藤さんの役どころを教えてください。
「オードリー」という森の娘の役で、牧田哲也演じる「タッチストーン」というのが公爵に仕えていた道化なんですが、一緒に“アーデンの森”という所に行き着いた時に、オードリーと出会って、恋に落ちるという…。
すごく“ブス”な役というか(笑)、本当にブサイクというのが大前提の役で。女性役も初めてなのでどうなるのかなというのは稽古前から楽しみだったんですけどね。僕自身も役と向き合って、(演出・上演台本担当の)青木豪さんと模索している最中ですね。
――とにかく見た目インパクトのあるビジュアルですが、最初にご覧になった時はどんな印象でしたか?
びっくりしましたね(笑)。ヘビメタの人みたいな…L.A.ガンズ(アメリカのハードロックバンド)みたいな感じだなと。でもここまでメーキャップしてもらって、ハードルが上がっているなと、率直に思ってます。
――素の状態からこのメークが完成するまでどのくらい時間がかかるのでしょうか?
でも30~40分だったと思います。ポスター撮影の時に一緒だった牧田に「一緒に写真撮ろう」って言ったら、めちゃくちゃビジュアルにびっくりして引いてましたね(笑)。本当は逆なのに…劇中では、牧田が言い寄ってくる役なんですけど。
――今回、柳下大さんなど久々の共演となる方もいらっしゃるようですね?
そうですね、「淋しいマグネット」('12年)以来の共演かな。大もいろんな作品で活躍していて、もちろん作品も見させていただいてますし、本当にすごくメキメキと自分の良さみたいなものを役に合わせて、投影して表現しているなと。
昔からいい俳優だなと思っていて、後輩なんですけど。ある種の気持ち良さみたいなものが、一緒に絡んでいてもありますし、安心感というものをすごく感じますね。
――遠藤さんもDステの舞台、初期の頃から活躍されてきたわけですが、ご自身の中で変わったなと感じる部分もあるのでしょうか?
もう19回目で、最初にDステやったのが「完売御礼」('07年)という作品で、扉座という劇団の茅野イサムさんに演出していただいたんです。
そもそも僕はD-BOYSができる前からワタナベエンターテインメントに所属していて、D-BOYSというのができるということになって、ちょっとみんなよりはアドバンテージというか、芸歴だけは長くて。
でもちゃんとした“ストレートプレイ”みたいな舞台の経験はなかったので、みんなと同じラインだったんですけど、みんなとやるとなるとどこかで個人的には模範にならなきゃいけないのかなっていう気持ちがあり、普通に頑張ってそれを力んでやっているだけみたいな部分は今思い返すとありましたね。
でも('12年に)D-BOYSを卒業したのもあってなのか、ここ最近の作品に参加させてもらう時には、“かせ”というか余計なプレッシャーみたいなのは外れて、すごく自分自身は一俳優としてDステに関わらせてもらっているのかなと感じますね。
あとはDステは作品としていろいろなジャンルをやってきてみんなもそれぞれ現場でいろいろ得たものを出し合って、それは昔からそうなんですけど、これからDステというものがどういうふうになっていくかっていうのは個人がどういうふうに作品に貢献できるか、一つの俳優像をもっと明確にしていくと、またDステの厚みが変わっていくのかなと。
――今作はDステシェイクスピアシリーズの3作目ということですが、遠藤さんのシェイクスピア作品への印象とか思いとかありますか?
蜷川幸雄さんの「シェイクスピア」シリーズとか、Dステの「ヴェニスの商人」「十二夜」はもちろん見ましたけど、僕自身今回「お気に召すまま」という作品、シェイクスピア作品に触れるのが初めてで、やる前はとにかく華やかなイメージでした。
その華やかなイメージの中にもブレないドラマの軸があって、非常に明確で分かりやすい物語が多いのかなと思っています。
今回の「お気に召すまま」に関しては、恋愛模様、恋をする、結婚するっていうものがありつつ、色とりどりなキャラクターが出てきて繰り広げられる会話劇。
これを会話劇にするっていうのが、シェイクスピアをやる上ですごくミソだと思うんです。普段使わない言葉の羅列が非常に多くて、説明ではあるんですけど会話をする。
その辺のいい意味でのミスマッチ感というのが、シェイクスピア作をやらせてもらっている中で勉強になるところだなと思いました。
――本番まであと1カ月くらいですが(※取材時)、本番が近づくにつれて緊張していくタイプですか?
常に緊張してますね。稽古でも緊張しますし、舞台でも。よく「緊張してるの?」って言われるけど、すごく緊張してて(笑)。
でも緊張を楽しむっていうところにいければ、稽古は無駄ではなかったんだなと。ただただ緊張しているだけではちょっと違うかなと。それをやっぱり楽しめる余白が自分の中にあるといいのかな。逆に緊張しないと焦ります(笑)。
――今回の舞台は遠藤さんにとっていろんな意味でチャレンジとなるかと思いますが、今後チャレンジしてみたい作品・役・テーマなどありますか?
作・演出をしてみたくて。実は本も少しずつマイペースで書いているんですけど、それをいつか形にできたらなと思ってます。テイスト的には現代公演劇。個人的に、映画が表現の場としては一番落ち着くし楽しいし、それは今も変わらないんですけど。
演劇の表現ってちょっと自分の中では苦手意識があって、これは自分が板の上で力になれるのかなってずっと考えていたんですけど、やはり前田司郎さん(舞台「宮本武蔵(完全版)」の演出担当)とか山内ケンジさん(舞台「城山羊の会『仲直りするために果物を』」の演出担当)とか豪さんもそうですけど、いろんな方と創作して、演劇の楽しさっていうのをすごく分かってきたような気がして。
だからこそ自分で本を書いて演出したらどうなるのかなっていうところにまで思いがきてたりしてて。単純に形になったらいいなと思いながら書いているんです。
――昔からの夢というよりも、舞台を経験していく中で芽生えてきた心境の変化ですか?
そうですね。漠然と映画を撮りたいという気持ちは昔からありましたけど、まさか演劇の方で書いてみたいと自分が思うとは思ってもみなかったですね(笑)。
書きやすいのかな、戯曲の方が。台本って形があるからテイストとして。戯曲の方が入りやすいというのがあったのか分からないですけど、自分でもそういう部分では驚きがありますね。やってみたいですね。
――では最後に「お気に召すまま」の見どころをお願いします。
今回の「お気に召すまま」では、今までのDステ作品のようにアクションとか殺陣とかそういったものがなく、恋愛が主軸というか、恋と出会いとそういったもので人間関係が進んでいく物語だと思うので、Dステとしてはすごく新鮮な題材なのかなと思います。
しかもそれを全員男でやるっていう楽しさもありますし(笑)、恋をする楽しさうれしさ喜びみたいなものをきっと劇場で感じていただけると思うので、ぜひ劇場へ足を運んでいただいたらうれしいです。よろしくお願いします。
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