‘16年7月クールで放送された北川景子が主演のドラマ「家売るオンナ」(日本テレビ系)。「家を売るノウハウに毎回驚かされた」「仕事に全力で立ち向かう姿や万智の「GO!」に前向きな気持ちになれた」などの称賛が集まり、第90回ザテレビジョンドラマアカデミー賞で作品賞、主演女優賞、助演女優賞、監督賞の4冠を獲得した。同作で初めてドラマを手掛けたという小田玲奈Pに受賞の喜びを聞いた。
――受賞おめでとうございます。制作過程の苦労はありましたか?
本当にすごい充実した毎日でした。息の合ったメンバーでやっていて、今回こういう賞をいただけて何て恵まれた作品だったのだろうと思いました。でも、家探し(ロケ場所探し)は大変でしたね。第1話はベランダから「おーい!」と呼ぶと声が届くところに病院がある物件…と台本には書いてあるんだけど、ロケ場所を探す制作部さんたちはどこまで実現できるんだろう…と不安そうでした。でも、「まさにここ」という場所が見つかって。脚本家の大石静さんはこの場所を知っていてこの話を書いたんじゃないかと思うぐらい(笑)、実際にロケ現場を見たときは鳥肌が立ったし、北川さんもテンション上がってましたね。
――脚本の無茶ぶりがないかひやひやした部分はありますか?
この企画を考えたきっかけは自分がバラエティーにいたころに、「有吉ゼミ」(日本テレビ系)の「坂上忍、家を買う。」を担当していて、家を見る興味っていうか、不動産業者がおすすめする家を見るっていうのが面白くて。それが企画の発端にあったので、ドラマに登場する「家」がバラエティーに富んでいなければいけないっていうのはずっと思っていたし、妥協しちゃいけないところだと感じていました。
――不動産業界を描くというときに、こんなドラマチックになるとは予想できました?
企画を思い付いたときから、「家を売ることで家族の悩みを解決する」という形は考えていました。そのためにまず「現代日本における家族の問題」をリサーチしました。例えば、中年の引きこもりが増えているとか、2世帯住宅に住みたいんだけど息苦しいから、2世帯近居を希望する人が多い…とか。そういう家族の問題と家ネタ(狭小住宅や事故物件など)を組み合わせて構成していきました。ただ、主人公の三軒家万智がどんな方法で家を売るのかはだいぶ悩みました。実は最初にできたのは第2話で、“引きこもり中年をより引きこもりやすくする”「引きこもりの城」を用意するヒロインにしよう、と大石さんが提案してくださったときに、「なるほど、それです!」と。いわゆる既成の概念にとらわれない三軒家万智のヒロイン像ができ上がりました。
――三軒家万智は北川景子さんしかいないとおっしゃっていましたが。
本当にそう。本読みのときに、北川さんが屋上で「庭野―!」って呼ぶシーンがあるんですけど、ものすごいでかい声で言ったときに覚悟決めてきてるんだなと感じました。すごい心強いというか、向こうも本気だし、私たちもより頑張らなきゃいけないなと思いましたね。実際3カ月一緒にいたら、ものすごく無駄なことが嫌いだし、的確にズバッと進んでいく素晴らしい座長だなと思いましたし、そういうところは三軒家万智にも似ているなと思いましたね。
――イモトアヤコさんについては?
イモトさんがこのドラマにいたことは、すごく大きいです。いつも現場を盛り上げてくださいました。北川さんにとってバラエティーの世界のイモトさんの存在は新鮮だったようです。イモトさんはイモトさんで、北川さんがドラマの番宣で「しゃべくり007」(日本テレビ系)とかで爆笑とっているのを見て、「学ぶべきことが多い」と言っていました。役者の世界とバラエティーの世界、普段違う場所で活動する二人、お互いにいい刺激になったようで、今でも頻繁に会っているようですよ。
――その2人の劇中のやりとりは面白かったです
本当に、白洲美加はイモトさんじゃなかったら…と思いました。大石さんも「こんなにダメにしてもいいのかな…」って心配していたんですが、実際にイモトさんが演じるのを見たらだんだん可愛く見えてきて(笑)。多少は、彼女の成長物語にするつもりだったんですけど、全然成長しなくて(笑)。本当は最後の第10話で家売る話になるだろうと期待もあったんですが、大石さんの中で一つの哲学として、「ダメな奴は簡単にデキるようにならない、別に仕事を続けることだけが人生じゃないし、あなたは仕事するのはやめて誰かに守ってもらう人生を選びなさい」と提案するヒロインでいいんじゃないかと。
――シリーズ化を待望する声もありますが
それこそ第10話の台本を読んだ北川さんが「面白い終わり方だけど、私、テーコー不動産やめるんですね…」と悲しんでくれて。最終話はああいう風にしようとは最初から考えていたんですけけど、こういう賞をいただいたり、「続編どうですか」と言われると、「やめさせなきゃ良かった」ってちょっと思っちゃった(笑)。でも、万智なら何でも売れると思うので、また違う「~を売るオンナ」シリーズをみたいなのがいいんじゃないか、とみんなで笑って話してました。
――最後にファンにメッセージをお願いします
楽しんでくれたんだということが、ものすごくうれしかったです。ドラマもバラエティーと同じように、気軽に楽しんでもらえるというか、ドラマを気負いせず見てもらいたいっていうのがあって。そういうところでいくと、とりあえず楽しんでもらえたのかなと思えてうれしいです。
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