'05年の旗揚げからずっと、ワンシチュエーションコメディーを展開してきた福岡の劇団・万能グローブ ガラパゴスダイナモスが'16年12月から年をまたいで4都市ツアーを開催中。
初めての熊本、ホームの福岡を経て、1月7日(土)より東京公演が始まる。夢を持つ姉弟と取引をもちかける悪魔との掛け合いを描いた新作「月ろけっと」について脚本・演出の川口大樹氏に語ってもらった。
――まず、「月ろけっと」について教えてください。
前作から始まった、ワンシチュエーション×SFコメディー路線です。従来のワンシチュエーションコメディーに星新一や藤子不二雄的なプチSFの要素をまぶして、人間が欲望に振り回されていく様子をコメディーで見せます。人が欲望にのみ込まれていく状況を悪魔的な気持ちでご覧ください。
――悪魔と欲望について、川口さんご自身の思うことは何でしょう?
星新一の作品によく「悪魔」というモチーフが登場するんですが、そこに登場する悪魔たちは皆なんというかこう、非常にキュートなんです。人間をいいように操ることもあれば、逆にやり込められることもあり。昔からとても気になる存在であったので、今回自分のコメディーの世界に悪魔を登場させられたのは書いていて非常に楽しかったです。「欲望」も、自分の過去作品の中に何度も登場している題材なのですが、悪魔は欲望の象徴みたいなもんですからね。「欲望に巻き込まれる人々を描いた悪魔コメディー」というのは、実は自分が一番書きたいものだったのかもしれないなと思っています。
――舞台に出てくるような悪魔に川口さんは会いたいですか? 会ってお願いすることは?
一度は会ってみたいです。ただ、なんでも願いがかなうとなると迷いますよね。なんだろう? 空飛びたいとか、瞬間移動ができるとか。でも、すご過ぎる能力だと代償がとんでもなさそうだし…とか考えると結局、無難な願い事しかできなさそう。“健康”とか。でも後々、なんであんな大きなチャンスを逃したんだ…ってめちゃくちゃ後悔しそう。そうなるともう、はじめから会わない方が幸せかもですね(笑)。
――熊本、福岡を終えてからの東京公演、何か反省点や気になることはありますか?
お客さんの感想で「面白い」「笑いました」はいつもですが、今回は「怖い」という声が結構な数ありました。本を書いている段階や、稽古の時点ではそこまで強く“怖さ”を意識してはなかったのですが、なるほどそんなふうにも見えているのだなあと。確かに、“笑いと恐怖”は感情として遠くにあるようで、実はとても近い場所にあるんだなあというのは新しい発見でした。
――東京のアフタートークゲストも楽しみですね。ゲスト陣について川口さんからひと言お願いします。
一色洋平さん(7日昼)…東京で大活躍中の俳優。福岡生まれ福岡育ちのガラパの芝居が、東京のさまざまな現場を経験している洋平君の目から見てどうなのか。赤裸々に語り合いたいです。
土田英生さん(7日夜)…土田さんとはもう10年近い付き合いです。僕にとって誰よりも頼れる兄のような存在です。iaku(いあく)の横山拓也さんと3人で兄弟です。ワンシチュエーション会話劇の師匠でもある土田さん。あとトークの達人です。土田英生ショーになること間違いなしです。
財部亮治さん(8日昼)…ガラパアフタートークゲスト史上初のYouTuber。うちの代表・椎木樹人の幼なじみだそうです。実は僕は面識ありません。画面越しで一方的に見ました(笑)。きっと、演劇とかあんまり見たことない方だと思うんですけど、そういう人にガラパの芝居がどう見えるのか。楽しみです。
小山田壮平(8日夜)…ALというバンドのボーカルで、高校時代の演劇部の後輩です。気心知れた相手で、毎年同窓会のようなテンションになります。作曲だけでなく、作詞にも定評のある壮平。物語への理解も深いので、トークは毎回楽しみです。あと弾き語りもやってもらいたいなと思っています。
中島かずきさん(9日)…福岡出身の大先輩。土田さん同様長い付き合いで、ずいぶんかわいがってもらっています。もはや、演劇界という枠に留まらず日本のエンタメを代表すると言っても過言ではないかずきさん。エンタメのプロの目線でもって作品のアレコレ話していきたいです。
ヨーロッパ企画(10日)…ガラパ旗揚げ当時から仲良くしてもらってます。ヨーロッパ企画のすごさは、(代表の)上田(誠)さんの作品が面白いのは当然として、メンバー全員がこれでもかというくらい個性的かつ面白くて芸達者だということ。なんでこんな面白い人たちが集まったんだろ。ガラパ人気企画、生コメンタリーにぴったりです。むちゃくちゃにかき回してくれるのでは。楽しみです。
――今後書いていきたいもの、演出していきたい舞台などありますか? '17年の公演予定もお願いします。
今年5月、次回公演が福岡のキャナルシティ劇場で決定しています。過去最大規模(キャパ1200席)なので、まずはそれを大成功させて、福岡の演劇史に新たな1ページを刻みたいです。また、秋冬に新作でツアーの予定なので、今開拓中である「ワンシチュエーションコメディー×SF」の方向性をより追求していきたいですね。悪魔で味をしめたので、次はなんだろう、妖精とか? ちなみに、鬼はもう登場済みです。星新一、藤子不二雄、筒井康隆的な感じをいろいろ押し広げていけたらなと思っています。
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