原作小説とコミカライズが累計70万部を記録した「人狼ゲーム」シリーズ。その実写化第5弾となる映画「人狼ゲーム ラヴァーズ」が、1月28日(土)に公開となる。これまでにも桜庭ななみや、土屋太鳳らが主演を務め、「ネクストブレイク女優の登竜門」とも言われる同シリーズ。新たな惨殺デスゲームに挑む主人公・高野蘭子を演じる古畑星夏に、今作の見どころや現場の様子、そして役者としての変化を聞いた。
──シリーズ5作目のヒロインに選ばれたと同時に、本作は自身初となる主演作にもなりますが、主演の座を射止めたときの心境はいかがですか?
「人狼ゲーム」は以前の作品から知っていたので、自分が主演に選ばれたと聞いた時にはうれしくて、演じるのがすごい楽しみでした。その一方で、改めて過去の作品を振り返ったときに、今まで主人公を演じられてきた方々の演技力の高さや爆発力に圧倒されてしまって、「自分が主演で大丈夫なのか……」と、少し不安になってしまって。ただ、これまでにもいろいろな役をやらせていただいて、自分の中でも主演をやりたいという気持ちがあったので、不安よりかは楽しみやうれしさ、作品を良いものにしたいという方が上回りましたね。
──主人公の高野蘭子は、登場キャラクターの中でも表情だけで見せる“静”の演技が多かったと思いますが、これまで演じられてきた明るいキャラクターとの演じ分けで苦労された点はありますか?
今回の「人狼ゲーム ラヴァーズ」に出てくるのは、みんな人狼経験者で、ここまで勝ち上がってきた子たち。ということは、過去に人をだまし、うそをつくというのが、ものすごくうまいという背景がある。そういう人たちをいかにこう、瞬きを少なくするとか、表情だけで相手をだまして信頼させなきゃいけないというのは、演じるうえで難しいなと思いました。それから、この作品に入る前までは、女子高生の明るいキャラクターを演じることが多くて、それがいきなりこの「人狼ゲーム」で静かだけど強い意志を持った蘭子役に変わり、やっぱり表情も全く真逆だったので、「前のキャラクターはもう、捨てなきゃ……」という感じで、前の作品に引っ張られないように気を付けました。蘭子について自分の中に叩き込むために、原作小説に書いてあることも書き出して、それを枝分かれさせながら自分が思う蘭子像を作り上げて。でも、これは自分が思っていることで、監督が考える蘭子像と違う場合もある。なので、そこは監督に聞いてみたり、虎之介役の池田純矢さんとすり合わせしたりして、どんどん蘭子像を固めていきました。
あと蘭子はとても強い女の子なんですけど、でもやっぱり弱みを見せる時もあったりするので、そういういろんな表情をナチュラルに見せたいと思いながら撮影には臨みました。というのも撮影中は、朝はフラットな演技なのに、夜は人を殺しにいかなきゃいけないっていう、テンションがバラバラなことが多かったので、それをいかにそこまで自分の気持ちを持っていかせるか。それから、つながりの表情にも注意しながらの撮影は大変だったなと思います。
──「蘭子像を固めるために監督や池田純也さんに相談した」とおっしゃっていましたが、表情や動きなどについては、かなり相談しながら撮影されたんでしょうか?
そうですね。今までの演技は自分の経験から近いものを引っ張ってきて、それを思い出しながら役を演じてきましたが、今回は絶対に経験しえない「人を殺す」という部分を、どうやって演じたらいいのかがわからなくなってしまって。それで監督にクランク・イン前に「このシーンはどうすればいいですか」と相談したら、「今はあんまり答えを出さない方がいいから、悩んでみて」と言われました。それから「蘭子の人物像は自分の中でちゃんと作って、固めてあれば大丈夫だから」とも。なので、蘭子の人物像は自分の中で固めてはいましたが、その答え合わせができなかったので、すごい不安の中でクランク・インを迎えました。ただ、不安いっぱいではあったんですけど、いざ撮影が始まったら、現場の雰囲気やシーンの状況に合わせて自然に役を出すことができて、それは初めての経験だったので自分でもびっくりしましたし、監督が伝えたかったことはこういうことなんだと、改めて監督のすごさを感じました。
それから虎之介とぶつかり合うシーンがあるんですけど、その時も人をつかむとか殴るとか、これまで演技でもやったことがなくて。その時の池田さんが、言葉で「ここはこうしよう」って言うのではなく、行動で引っ張っていってくれたのが、ものすごくありがたかったです。もちろん力の加減はしてくれるんですけど、面と向かってどん!とぶつかってきてくれて、それに感情を引っ張られるように私も自然にぶつかっていくことができたと思います。
──物語の中では登場人物たちが次々に亡くなっていきますが、そのシーンの心境では役としての気持ちが大きいんでしょうか? それとも古畑さん自身の気持ちが大きくなる場合もあるんでしょうか?
自分の気持ちが大きくなるシーンもありました(笑)。それが一番出たのは、物語終盤の投票シーンです。ある人物が投票によって死に追い込まれるんですけど、終盤までくると大変な状況をここまで一緒に頑張ってきたのに裏切らなければいけないというのが、自分の中で本当につらくなってきて、こんなの我慢できないって自然と涙が出てしまうんです。でも監督に、「蘭子はここで相手をだまさなければ自分が勝てないから、ここは泣いちゃだめだ。ちゃんと強い心を持たないといけないんだよ」って言われて。もちろん蘭子としてはそうだろうな、とは思うんですけど、自分の感情がどうしても出てしまって、それを必死に押し殺すのが、これまでの女優業を通しても今までで一番大変でした。
──2016年は20歳を迎えられたという一つの節目だったかと思いますが、振り返ってみてどんな1年でしたでしょうか。
10代の時は20歳になったら、何かがすごい変わるのかなって思っていました(笑)。でも実際20歳になってみると、そんなにお酒も強くないし、言うほど何も変わらないんだなって。ただ、やっぱり20歳だから、自分の責任感っていうのは変わってきたと感じています。いろいろ考えることは考えなきゃいけないんだなと思って、自分に対して向き合う時間もこの1年では増えました。主演をやりたいと思って、願いもかなって、でもまたそこから変わっていかなきゃいけないというのもあります。2016年は、自分とたくさん向き合って、いっぱい失敗もして、いろんな発見もできたので、そういうのを全部含めて2017年はもっと成長して、自分の強みをもっと増やしていきたいです。役者としては、今回「人狼ゲーム」でシリアスな演技をするのも楽しかったので、それをもっとやっていきたいですし、「ラーメン大好き小泉さん」(フジ系)のようなコメディーも楽しくて、今後もやっていきたい。だから、振り幅が広くて、いろんな表情を引き出せる女優さんになりたいですね!
──最後の締めに、改めて「人狼ゲーム ラヴァーズ」の見どころを教えてください。
「ラヴァーズ」は今までの「人狼ゲーム」とは異なって、みんなが人狼経験者で、さらに自分たちの手で人を殺さなきゃいけない。プラス、登場人物ひとりひとりのことが細かく繊細に描かれているので、ただの“デスゲーム”ではなく、意味を持った「人狼ゲーム」になったのではないかなと思います。 自分の命を懸けて、ゲームに参加するって本当になかなかできないことだなと思いますし、大変なことやつらいこと、壁にぶち当たって危機もたくさんあるんですけど、それをうまく乗り越えて、また戦いに向かう姿が、本当にひとりひとりかっこいいです。
今の時代、いじめのような辛いことがあって、それが原因で死んでしまうこともある。でもどんなに辛くても、それはしてはいけない。この思いは監督やキャストの皆さんも一緒で、そんなメッセージ性をもたせたいよねという話をしながら、それぞれが今回の撮影に臨みました。だからつらいことがあって、全部投げ出して楽になりたいなって思ったときに、「人狼ゲーム」を見ていただいて、今の状況はつらいけど、生きてるだけで幸せなんだよっていうのを、見てくださる皆さんに伝えられたらいいなって思います。あとは役職が分かったうえで見ると、蘭子たちが置かれた状況がいろいろ分かるようになって、作品の見方が変わってきます。「ここの合図は、もしかしてこういうことだったのかも」みたいな。「人狼ゲーム」ならではの、2回目も3回目も楽しめる作品になっているので、そういった楽しみ方もしてほしいですね!
──ちなみに古畑さんはご自身がつらい状況に置かれたときには、何をしてストレス発散していますか?
悩んだ時には友達に会ったり、映画……特に洋画を見たりします。「なんだ、自分の悩みってこんなちっぽけなんだ。そんなに大したことないんだ」って思えるので、自分より元気を持ってる人に会いに行って、パワーをもらっちゃってますね(笑)!
竹内巴里
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