魔法使いの嫁のあらすじ一覧
【最終回】この国に来て関わった大切な人々と妖精たち。彼らの力を借り、ついにチセは不死の魔術師と相対する。ふたりの魂を苛んできた痛みや苦しみは、どこか似ていた。苦痛から逃れるために、一方はいつしか己の身をかえりみなくなり、もう一方は他者をいけにえにし続けた。その繰り返しに果てがないことを今のチセは知っている。少女の思いは、逃れがたき連鎖(れんさ)に一つの区切りをもたらす。
愛した相手に才を与える代わりに、命を奪う吸血鬼・リャナン・シー。彼女にとって愛すことと、大切な存在を失わぬため愛さぬことは、どれほどの違いがあるのだろう。彼女の思い人、ジョエルの命は尽きかけていたその胸の内には、バラの園で見た一瞬の幻としてリャナン・シーの姿が焼き付いている。終わりが訪れる前に、引かれ合う二人をひと目だけでも会わせたい。そう強く願うチセは、彼らのために出来る事をやろうと決意する。
完成したつえに触れた瞬間、チセは幻視する。無数の閃光の先に広がる、霧に包まれた巨木の群れを。縁(えにし)の糸が結ばれ、彼女はかつて見送った竜と再会する。自ら命を絶った母、自分を置いていった父。その本当の思いは、今となっては知るすべはない。しかし今のチセには、伝えたい思いと言葉、そして伝えるべき相手がいる。切なる思いは彼女をはるか遠く、帰るべき場所へと運んでいく。