ヴァイオレット・エヴァーガーデンのあらすじ一覧
大陸の南北をつなぐ大陸縦断鉄道。平和の象徴として完成したこの鉄道を使って、ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国が、和平書簡を交わす。C.H郵便社からは条約文書を代筆するカトレアと、その護衛のベネディクトが同行する。和平反対派は鉄道の破壊を目論み、それを阻止するためにディートフリートの部隊が招集された。一方ヴァイオレットは、エイダンの故郷に手紙を届けた帰り道で飛行機から不審な煙を目撃する。それは和平反対派による破壊活動の痕跡だった。良からぬ気配を感じ、機関車の停車場所に降り立ったヴァイオレットは、カトレアたちと遭遇する。この時、すでに車両には敵兵が潜入していた。
C.H郵便社に、戦場の兵士から代筆依頼が届く。ホッジンズは依頼を断るつもりでいたが、偶然その依頼を立ち聞きしてしまうヴァイオレット。…戦場にも誰かに思いを伝えたい人がいる。ヴァイオレットはホッジンズに黙って戦場へ赴いた。クトリガル国、メナス基地。そこは、内戦が勃発したばかりの危険地域。たどり着くことさえも困難な場所だった。ヴァイオレットは現地のヴァンダル郵便局の協力を得て、飛行機で基地へ向かう。依頼主のエイダン・フィールドは、所属する部隊の出撃命令を受けて雪山の中を歩いていた。戦争はもう終わったはずなのに、恋人のマリアと両親が待つ故郷には、まだ帰れない。突然、鳴り響く銃声。物陰から兵士たちを狙っていたのは、ガルダリク帝国の残党。まるで狩りを楽しむかのように、兵士たちを次々に撃つ。「嫌だっ……!! 死にたくないっ!! 俺はっ……帰るんだ!!」逃げ惑うエイダンだったが、彼から散った鮮血は雪を赤く染め上げた。
マグノリア家の屋敷につながる白樺の一本道を、大きなお人形が日傘を差して歩いて来た。冬の初め、屋敷にやって来た自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。マグノリア家の一人娘・アンは、好奇心旺盛でお母さんが大好きな女の子。けれど、最近は気分が晴れない。母の体調が芳しくない上に、訪ねて来る客が後を絶たない。一緒におままごとをすることも、本を読むことも、虫を捕まえることもできない。手紙を書くために母が招いたという「お人形」も、きっと私から母を奪う存在に違いない。それから、母はヴァイオレットと二人きりでアンに内緒の手紙を書き始めた。母に近づけないアンの心には、ますます不安が募る。
インテンス奪還作戦中、ギルベルトは敵の銃弾を受け致命傷を負う。動けなくなったギルベルトを連れて、逃げようとするヴァイオレット。さらに敵の攻撃を受けヴァイオレットの両腕は、失われた。ギルベルトが何度逃げろと告げようとも、ヴァイオレットはその場を離れようとしない。ギルベルトはヴァイオレットにほほ笑みかける。「生きて、自由になりなさい。心から…愛してる」だが、ヴァイオレットは言葉の意味が理解できず、悲痛に訴える。「私…わかりません、少佐。「あい」ってなんですか…?」敗北を悟った敵軍は自らの総本部であるインテンスを砲撃。崩壊する大聖堂の中に残された二人は、がれきの中へ消えていった…。
自分が誰かの「いつかきっと」を奪っていたことに気づいたヴァイオレットは、いつの間にかその身が燃え上がっていたことに気づく。…4年前。北東戦域で拾われた「武器」と呼ばれた孤児の少女は、ギルベルトと出会った。言葉も話せない少女は、うつろな瞳でギルベルトを見つめる。ギルベルトは少女を引き取り、上官の命で彼女を自分の部隊に入れることになった。ギルベルトは少女を「ヴァイオレット」と名付けた。その名が似合う女性になるようにと願いを込めて。ヴァイオレットはギルベルトのもとで、言葉を覚え、文字も書けるようになった。一方で、その呪われた才能とも言うべき並外れた戦闘能力で、次々と敵兵を倒していく。一人、また一人。ヴァイオレットが敵兵の返り血を浴びるほど、ギルベルトの部隊は功績をたたえられ、ヴァイオレットのうわさは「少佐の武器」として瞬く間に広まった。そして、ギルベルトの心は締め付けられていった…。
『いつか、きっと見せてあげるね、お父さん』そう言った娘は、もうここにはいない。湖畔にぽつりと立つ屋敷に、人気戯曲家のオスカー・ウェブスターは暮らしていた。オスカーは戯曲の執筆を手伝ってくれる自動手記人形を呼び寄せる。現れたのは、オスカーが名前すら悲しくてささやけない「あの子」と同じ髪色の少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンだった。ヴァイオレットがやって来ても、オスカーは何かを紛らわすように酒を飲み続け、仕事に向かおうとしない。それには理由があった。オスカーには自分の命よりも大切な娘がいた。お気に入りの日傘を差して湖畔を歩く「あの子」の名前はオリビア。『わたしもこの湖を渡ってみたい。あの落ち葉の上なら、歩けるかなぁ』そう言って、オスカーにほほ笑む。だが、幼い彼女は病に冒され天国へと旅立った。ただ一人、オスカーを残して。大切な人との別れがどれほどつらいことか。ヴァイオレットはオスカーの深い悲しみに共感する。
200年に一度の彗星にまみえるように、人と人の出会いも思いがけず訪れ、瞬く間に過ぎていく。たった一度の出会いが人生を変えてしまうこともある。ユースティティアの山間部に建つ、シャヘル天文台。写本課で働く少年、リオン・ステファノティスは人生のほとんどの時間をここで過ごしている。まだ、恋は知らない。天文台の大図書館には、悠久の時を経た書物が数多く眠っている。日々劣化する古書を記録し後世に残す写本課は、仕事の補佐として大陸中から自動手記人形を集めた。タイプライターを片手に国を渡り歩く自動手記人形たち。リオンは彼女たちを母と重ねて嫌々していた。家を出たまま戻らない文献収集家の父を探すため、幼い自分を置いて旅立った母。リオンは母が自分よりも愛する男を選んだのだと思い、女にも恋にもコンプレックスを抱くようになった。
季節は移り、空が高くなる頃。ヴァイオレットは数々の手紙を代筆し、貴族の間で話題の自動手記人形になっていた。今回、ヴァイオレットが代筆するのは隣国へ嫁ぐ王女の恋文。ドロッセル王国の王女とフリューゲル王国の王子が交わす恋文を国民に公開することで、国を挙げて二人の結婚を祝う。これは王国の伝統的な儀式であり、戦時中に敵対関係であった両国の和平を結ぶ「婚姻外交」でもあった。ドロッセル王国の王女・シャルロッテは、14歳のあどけない少女。異国へ嫁ぐことも、侍女のアルベルタと離れることも、不安でたまらない。王女の恋文を代筆するのは、彼女と同じ年頃の自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。ヴァイオレットは古今東西の書物から得た恋愛の知識で、見事な恋文をしたためる。
長かった髪をばっさりと切り捨て、ハイヒールを履いて、お気に入りの衣装をまとえば、気分はライデン一番の自動手記人形。新人ドールのアイリス・カナリーは、働く女性に憧れていた。アイリスに見知らぬ人物から初めての指名が入る。都会を離れたのどかな土地カザリへ向かうアイリスとヴァイオレット。そこで待っていたのはアイリスの両親だった。心配性の両親は都会で働く一人娘に会いたくて、偽名で依頼を出したのだ。両親はアイリスのために誕生日パーティーを開き、花婿候補を集める。その中には、アイリスがかつて思いを寄せていた彼の姿も。ショックを受けたアイリスは、途中でパーティーを飛び出してしまう。慣れないハイヒールを履いて背伸びをした理由。生まれ育った故郷を離れた理由。それは、実らなかった恋を忘れるため…アイリスが告げた『愛してる』は、長年恋い焦がれた彼の心には届かなかった。
良きドール〈自動手記人形〉は、相手が話している言葉から伝えたい本当の心をすくい上げて「手紙」にする。それは、自動手記人形にとって何よりも大切なこと。そして、何よりも難しいこと。自動手記人形の養成学校に通うルクリア・モールバラは、そこで軍人のように振る舞う一風変わった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンと出会った。銀色に輝く義手で打つヴァイオレットのタイピングは、速く、正確。そして、学科の成績も優秀だった。だが、彼女が代筆したルクリアの両親へ宛てたものは「手紙」と呼べるものではなかった。
エリカ・ブラウンには夢があった。夢中で読んだ小説のように、人の心を動かす言葉で手紙を書くこと。だけど、現実は…C.H郵便社に新人の「自動手記人形」〈ドール〉が加わった。人形のように無表情な少女…ヴァイオレット・エヴァーガーデン。彼女が人の思いを手紙にする「自動手記人形」の仕事に向いているとは誰も、もちろんエリカにも、思えなかった。相手の言葉をそのまま受け取り、思ったこと、感じたことを率直に表現するヴァイオレットには、依頼人の「本当の気持ち」がわからない。そのため依頼人はヴァイオレットの代筆した手紙に怒り、C.H郵便社には苦情が届く。