――洋服好きという設定だとファッション関係の仕事をしている場合が多いですが、とわ子を社長にした意図はありますか?
一社員ではなくて社長の方が金銭的にも時間的にも自由なのですてきな暮らしを描きやすいと思いました。社員だと何時から何時まで仕事をしなければいけないという制約があることも多いので、物語を展開していく中でいろいろなことを動かしにくい点もあります。
あとは、坂元さん自身が、会社での人間関係のトラブルや悩みよりも、社長の孤独であれば想像できる気がするということで社長になりました。物語としての動きやすさと坂元さん自身の共感の二つが社長にした理由です。
ファッションの仕事をしている人だけがファッションを楽しむものではなくて。40歳を超えている松たか子さんは、今までファッショナブルな役をあまりやっていないからこそ、誰でもおしゃれは楽しんでいいし、その人のスタイルがいいとか似合うかどうかよりも、洋服が好きで洋服を楽しんでいる人にしたかったので、ファッション関連の仕事という選択肢はありませんでした。
――ドラマの中で洋服の色がキーになっているのかなと思いましたが、キャラクターごとの色は意識されましたか?
伊賀さんが設計してくれた部分もありますし、チーフの中江和仁監督の美術センスに大変助けられました。すてきだと思うものが、坂元さんと私と中江さんが近くて、考えが一致していることはドラマを作る上で大事だなと感じました。
例えば、台本上におしゃれな何とかを買ってきて設置すると書いてあって、この“おしゃれ”って何をおしゃれとするかで違うものになってしまうと思います。家のセットも、もともと壁は白く塗られていたのですが、こっちの色を入れてくださいと美術さんにお願いしたり、中江さんの家の家具を持ってきたりしてくださって。とわ子の家のダイニングルームの椅子は中江さんの家から持ってきたものです。
また、キャラクターごとの色については、岡田さん演じる慎森は茶色とネイビーを基調としていて、八作はピンクやオフホワイトなど柔らかい色にしました。
鹿太郎さんはパキッとした明るい色にして、物持ちがいい人という設定なので、昔パパラッチだった頃に着ていた迷彩の服を合わせて着るなど、裏設定と合わせて監督と伊賀さんが色彩設計をしてくれました。