ミュージカルという世界の中で表現するということ
真彩:役作りって役者さんによって“客観的に役を見る方”と“自分に近いものを見つけていかれる方”がいらっしゃると思うんですが…。海宝さんはどのように役作りをされますか?
海宝:役柄とか作品によって毎回違うかな…。「王家の紋章」に関しては、非日常というか、現代の価値観とかけ離れたキャラクターだと思うんです。
脚本・演出の荻田浩一さんがよくおっしゃるんですけど、「この作品は40年前に書かれた3000年前の物語だから、現代人の我々が考えるエネルギー感とかダイナミクスでのぞまないと成立しない」と。40年前の社会のパッションや、3000年前に生きていた人々のエナジーと同じレベルまで全員が持って行かないと成立しないというのが大前提にあると思いました。
ナチュラルにアプローチするだけだと成立できないんです。僕が演じるメンフィスというキャラクターは3000年前、ある意味神に等しい存在で彼自身も自らを神に選ばれた、神の代理の存在であるという感覚で生きているんですね。
生死の価値観も違うし、自分と他者の関係性も今では考えられないものがあって、平気で墓荒らしを自ら死罪にしたり…。
その後、キャロル(神田沙也加と木下晴香のダブルキャスト)と出会って愛に目覚めていくというストーリーですが、それを漫画ではなく、ミュージカル版だと3時間弱で表現しなきゃいけない。時間の制約がある上、そのテンポ感の中でファラオであるメンフィスの成長も描かなくちゃいけないんです。
いかに自分が納得してやりきるかということが、この作品の難しいところだと思いました。だからこの作品は、両面のアプローチができる作品だなと。
漫画としてのデフォルメされたキャラクターや世界観、せりふ回しや立ち回りにしても漫画チックな表現を突き詰めて行くことが一つ。
そして、役者自身がその価値観を「なぜ彼はそんな行動をとるのか」と理解し、腹に落とし込んだ上でやるということ。納得できないことに対して、“やりきる”って難しいんですよね。
でも、古代エジプトのことを調べると、ファラオという存在は油断すれば人にすぐ足を引っ張られ、殺されてしまうのが当たり前。そういった環境の中で生きていかなくてはならないので「強くなくては、恐怖の対象でいなければ」と、幼い頃から叩き込まれている存在だと知りました。
いわゆる“俺俺”なキャラクターになっているけれど、当時のことを考えてみると、他者への扱い方も含めて意外とそこまで現実離れしているわけではないのかもしれないですよね。そう考えて行くと、自分自身がそういうリアリティをもってデフォルメして表現していけば、自分自身も納得して世界観も表現できるのかなって思います。その両面のアプローチを、今回試みている感じですね。
真彩:面白いですね。宝塚だと衣装やメイクなど、デフォルメされているものの方が多いのですが、その中で夢物語ではなく、ご覧になっている方がどこか自分と重なって、リアルに感じてもらえることが大切なのかなと思って演じていました。
今の話をお聞きするとどのようなメンフィスさんに出会えるのかワクワクしますし、すごく楽しみです!
海宝:ありがとうございます。
真彩:ミュージカルって誇張されている部分が大きいですが、そういった中で“リアル”を感じると、お客さまは客観的ではなく、のめり込んで観てくださるのかなと。
海宝:ずっと感じているのは、どの作品であれ、交流していくことで生まれるエネルギーがあるということ。
特に「王家の紋章」のような漫画原作の作品は、時代背景も現代でなく、コスチュームも華やかで…。デフォルメされた世界だからこそ、自分で余白を自家発電して、自分の表現で押し切るっていうことができる作品だと思うんです。
でも、そういう自分で発電して生まれるエネルギーより、一緒に芝居している方との交流によって生まれるエネルギーのほうが結果的にはお客様に届くんじゃないかなと。
共演者の方との芝居を通しての意思疎通は稽古でしっかりと詰めていかなければいけないし、大変な作業ではありますが、そこを大切にしていきたいと“リアル”を伝えていきたいと、この作品だからこそ強く感じました。
真彩:きっと色んな方と「プラス」するのではなく「かけて」いくことで、エネルギーが倍増するんでしょうね。デュエットとかでもその「かける」エネルギーがいい効果を生んで、お客様に伝わるんだろうなって思います。
海宝「自分の心が動いた時って本当にすごく奇跡的な瞬間だなって」
真彩:海宝さんが演じている時に心が震えた瞬間はありますか?役者さんとしてこの世界にいるには、何か心が動くことがないと続けられるものではないと思うのですが…。
海宝:やっぱり、周りと交流していてエネルギーが生まれる瞬間ですね。このエネルギーが生まれて、演じている役や自分の心が動いた時って本当にすごく奇跡的な瞬間だなって。それを味わうために芝居やっているんだなって感じますね。
劇団四季の「ノートルダムの鐘」に出演した時に特に感じることが多かったです。僕が演じたカジモトは人とあまり触れあったことがないという役どころ。外の世界で誰かとふれあって心が通じていくというプロセスを踏む作品だからこそ、余計にそういうものを感じる瞬間が多い作品でした。
真彩:一人では作ることのできない、舞台だからこそそう思うんでしょうね。
海宝:そうですね。稽古は、そことの戦いだなって思います。ついつい自分の役に必死になっちゃって、「ああ今、自家発電でしちゃっているな」ってなるんです。
「相手に集中して、相手の芝居を受け取って…」って、口で言うのは簡単じゃないですか。でもいざ自分をかえりみた時に、「本当にできているか?」って。その部分が稽古の一番面白い部分であり、実現のために苦しむ部分でもあります。
真彩:そこがパッと繋がった瞬間って「うわ、これか!」ってなりますよね!
海宝:はい。積み重なっていくエネルギーを感じます。
8月5日(木)~8月28日(土) 帝国劇場
9月4日(土)~9月26日(日) 博多座(福岡)
真彩希帆、海宝直人出演 オーディオドラマ 青春アドベンチャー「1848」
8月16日(月)~20日(金)、8月23日(月)~27日(金)、8月30日(月)~9月3日(金)
夜9:15-9:30 NHK FMで放送
CYANOTYPE(海宝直人、小山将平、西間木陽)
8月18日(水)発売 MIni Album PORTRAITS
リリース記念コンサート「PORTRAITS」
10月9日(土)17:00開演 行徳文化ホールI&I(千葉)
海宝直人ゲスト出演 望海風斗コンサート「SPERO」
10月4日(月)〜5日(火) KAAT神奈川芸術劇場ホール
真彩希帆出演 ミュージカル「ドン・ジュアン」
10月7日(木)~10月17日(日) 梅田芸術劇場メインホール
10月21日(木)~11月6日(土) TBS赤坂ACTシアター
真彩希帆 ディナーショー「espressivo」
11月7日(日)~9日(火) 第一ホテル東京にて開催
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