その場で湧き上がった感情を大切にしたい
――お二人共「千と千尋の神隠し」がそもそも大好きだったとのことですが、それだけの魅力を感じたのは、どんなところですか?
川栄:初めて見た時は小さかったので、千尋を10歳の子供とは思わないで見ていたんです。でも今こうして自分が演じるとなって改めて作品を見返すと、こんなに小さい子どもが頑張っていたんだ!という、その必死さ、一生懸命さがすてきだなと思います。
福地:私が幼心に感じたのは、でてくる生き物たちの力強さに衝撃をくらった感じ。そしてよくこんなに怖い世界に飛び込んでいくな、ということでした。
とても奇妙な雰囲気がずっと続いてるのに目が離せないものがあって。その怖かった印象が大人になると、リアルな世界ではないのに、キャラクターの人間味や場面の数々がとてもリアルに感じられて。
そういうところをもしかしたら子供は真っすぐに信じることができるのかなと。そんな二つの面からこの作品を見て楽しいと感じましたし、これからもそうした楽しみがもっと広がっていく、舞台を通してそうなっていけたらすてきなことだなと思います。
――演じる上で特に楽しみにしているシーンはありますか?
川栄:オーディションの時に、ハクからおにぎりをもらって号泣するシーンをやらせてもらったのですが、そこはとても印象的なシーンでいいなと思っていたんです。
でも、いざ舞台で一連の流れを通して見ていると、走り回って、走り回って、極限の状態の千尋だったので、見ている時にはとてもいいのですが、演じるとなると心の動きも大変な場面なんだなと思いました。
福地:私がオーディションで印象に残っていたのが、ハクを助ける、釜爺に電車のチケットをもらうシーンでした。映画を見た時にも印象的だったシーンなので、演じようとか、見せようとするのではないところ、自分の中に生まれた感情を大事にできるシーンなのかなと思っています。
もちろん、いろいろなところで各々の千尋の魅力を引き出していただく瞬間ってたくさんあると思いますが、いま自分が演じてみて湧き上がった感覚を大事にしようと思えたシーンなので、そこがどんなふうに変化していくのかが、とても楽しみです。
もちろん頑張るけれども、頑張りすぎずに
――“生”の舞台の魅力をどう感じていらっしゃいますか?
川栄:いつも舞台はとても緊張してしまうのですが、見てくださる方にもそういう緊張感を含めたさまざまなものが、良い意味でダイレクトに伝わるのが舞台の良さでもあると思うんです。
その日の調子もありますし、せりふを言い間違えることも時にはあります。でもそれをすべて感じとれるのが舞台のいいところだと思っているので、もちろん頑張るんですけど、ある意味で頑張りすぎず良い緊張感を持って、お客様と一緒にその日の空気感を味わえるように、少しでも余裕を持って演じられたらいいなと思っています。
福地:「橋からの眺め」で、舞台って一人でやっている感覚になる時間は一度もないんだな、と教えてもらったすごく貴重な経験だったので、今日も川栄さんがお隣にいてくださって、心強いです。
これから橋本環奈さん、上白石萌音さんと共に時間を過ごせたり、自分自身もそこに力を注いで、素晴らしいチームの皆さんと良い緊張感を保ちながら千尋役を楽しめるように、お客さまに楽しんでいただけるようにできたらなと思っています。
――その千尋役が今回4人いらっしゃる訳ですが、他の方たちをどう意識していますか?
川栄:4人ワンチームで作っていけたらいいなというのと、やっぱり橋本さん上白石さん、もちろん他のキャストの方々がここまで創り上げてくださったものがあっての舞台なので、私たちが入ることでさらにパワーが増したよね!と思ってもらえるものにしたいな、と思っています。
福地:こんなにも強い味方がいてくださるという経験もなかなかない中で、あの表情の裏側にはどんなことがあったのかを知ることができるというワクワクもあります。
いまワンチームとおっしゃってくださったように、プラスになれるように、皆さんの背中を見ながら、そして自分も発信できるように、取り組んでいけたらいいなという思いです。
――その4人の千尋の中で、自分のチャームポイントはここだ!を教えていただくとすると?
福地:自分のというよりは、まだ見たことない川栄さんの千尋を見るのが楽しみです。舞台ならではの動きがすごく難しいとおっしゃっていましたよね?
川栄:しなやかな動きと言うのか、座っている状態からいきなりパッと立ったり、服を引っ張られて困ったりとか、一生懸命やってみたのですが難しくて! 橋本さんも上白石さんも、それがものすごくうまいんです。
福地:あぁ、分かります!
川栄:映像を一時停止して勉強していますが、そこは先輩に教えてもらいながら良いところを吸収しようと思っています。自分はどうなるのか?はまだ自分でも分かっていない段階です。
福地:その千尋の動きの面だけで見ると、これは訓練だなと思いますよね。
川栄:そう、体力がいるよね。ただ、こうしてきちんと話すのは今日が初めてくらいなんですけど、(福地は)すごくふわふわしているんです。この雰囲気で、稽古場でものすごく鋭かったらどうしようと思うくらい(笑)。ふわ~んとした空気が流れているので一緒に稽古をしていくのが楽しみです。
福地:よろしくお願いします。
川栄:こちらこそ!
福地:川栄さんは尊敬する俳優さんのお一人だったので…。
川栄:そんなぁ~(笑)。
福地:本当です。ですからお稽古を一緒にさせていただける時間の全てが学びだなと思っています。その上で私がふわふわという感じなのだとしたら、川栄さんはちゃきちゃきしてますよね。
川栄:そうなんです! 私すごくせっかちだから、きっとお互いの時間軸が全然違うだろうなと(笑)。そのふわふわ感がすごくすてきです。
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■舞台「千と千尋の神隠し」ロンドン公演公式サイト
https://www.spiritedawayuk.com/