マーベル・スタジオの最新ドラマシリーズ「エコー」が、1月10日に全話一挙配信された。今作はアベンジャーズのオリジナルメンバーの一人であるホークアイ/クリント・バートン(ジェレミー・レナー)が主人公のドラマシリーズ「ホークアイ」でMCUに初登場した“エコー”ことマヤ・ロペス(アラクア・コックス)が主人公の物語。ホークアイに父を奪われ、犯罪王の“キングピン”ことウィルソン・フィスク(ヴィンセント・ドノフリオ)に裏社会の残忍な後継者として育てられた彼女は、耳が聞こえず、義足だが、鋭い足技を含む高い戦闘能力を備えており、ホークアイも追い詰めたほど。今回は最終回へとつながる重要回“第4話”「タロア」を振り返ってみる。(以下、ネタバレがあります)
予告編の“続き”に衝撃
2008年、まだ幼いマヤが学校からの帰り道にアイスクリームを買おうとするが、路上アイスクリーム店の店主は「何が欲しいんだ? 口に出して言ってみろ」と責めるような口調で問いただす。マヤが話せないのを分かっていての対応で、大人気ない差別に見てる側も胸が痛くなる。
その様子を、マヤを迎えに来た車の中で見ていたフィスク。アイスを買えずにしょんぼりして車に乗り込むマヤを見て、「おじさんは用事を済ませてくる」と言い、アイスクリーム店の店主を路地に引き摺り込み、容赦なく殴打し、白いスーツが返り血で赤く染まった。その姿をマヤには見せたくなかったフィスクだが、マヤは見ていた。そんなマヤにフィスクは「怖がらなくていい」と語り掛ける。
配信が始まる前に公開されていた予告動画でも強烈な印象を残したこのシーン。フィスクの暴力に幼いマヤが怯えてしまうのかと思っていたが、実際は違っていた。怖がるどころか、駆け寄ってきたマヤは店主に幼いながらも渾身の蹴りを入れるのだ。差別を受けているのがこの時だけではなくて、日常的に行われていたのではないだろうか。マヤの中に溜まっていた憤りが、フィスク“おじさん”の行為を見て、溢れ出したのかもしれない。
予告編の“続き”に少々驚いたが、そういうことなら蹴りを入れたくなる気持ちは分かるし、その後マヤが“犯罪王”の下で裏社会を生きてきたのも納得がいく、短いながらも重要なシーンだと思う。
2021年、成長したマヤはフィスクと食事をしている。毎週日曜日のディナーは続けるが、修業は終わったとフィスクは告げ、「時が来た。理論から実践に移るんだ。信頼できるのはお互いだけ。これが最後のレッスンだ」とマヤに伝えた。これまでマヤとの会食の時に付いていたであろう手話の通訳も、お役御免とばかりにあっさりと部下に殺させた。第4話は、マヤとフィスクの関係性がよく分かるそんな2つのエピソードで始まった。
フィスクが生きていた
そして第3話の続きとなる現在のパートへ。銃で撃ったはずのフィスクがマヤの前に現れた。部下たちがマヤの目にコンタクトレンズのようなものを入れると、マヤの目にはフィスクが話した内容がバーチャルの手話として見えるようになった。コンパクトなARグラスを装着したようなイメージだろうか。
フィスクを撃ったマヤは、フィスクの部下たちに殺されると思って逃亡していた。それなのにフィスク自身が現れ、「昔のように日曜のディナーをしにきた」と言って、撃ったことを怒っていないとまで言い切る。
怖いほどに優しいフィスクに警戒するマヤ。ディナーのために持ってきた上等なワインを流し台に捨てたりするが、フィスクはそのことも怒りはしなかった。それどころか「自分の帝国が欲しいなら与えよう。全て手に入る」と、まさに後継者にさせたいということを提案。「私と一緒に来るだけでいい」と、罰を与える気がないということも伝えた。
“信頼”という言葉を盾にして、マヤとの距離を縮めようとするフィスク。一緒にニューヨークに帰れば、念願の“自分の帝国”が手に入る。追っ手から逃げる生活からも抜け出せる。大きな選択を迫られることとなったマヤは、叔父のヘンリー(チャスク・スペンサー)に相談し、祖母・チュラ(タントゥー・カーディナル)とも久しぶりに再会し、話をした。彼らと会って話したことでマヤは決断する。
第4話の後半はラストへとつながる重要な要素が多く、マヤが何を思って決断に至ったのか、心情の変化や葛藤を確かめることができる。
「エコー」は、ディズニープラスで全5話独占配信中。
◆文=田中隆信
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
小学館集英社プロダクション
発売日: 2014/08/27