草なぎ剛「僕はものすごく震えました」 【連載コラム】
今までやった役の中で一番武骨でワイルド
演出のルヴォーさんはとても繊細で、僕なんかより日本のことを理解している方だなと思いました。日本人も日本の文化もすごく好きで、僕がこの作品に関して思ったことや映画の感想を、結構舞い上がって熱く話しているのを、ずっと待ってちゃんと聞いてくれた。もちろん通訳さんはいるんだけど、日本語も分かっていて、すごい安心した。通じ合えたなと思えて。
芝居に関して彼がどういう要求をしてくるのかは分からないし、ドキドキするけど、すごい楽しみです。音楽劇というものもどういうものなのか、歌を歌うのかもしれないし、まだわからないんだけどね。今、ルヴォーさんの頭の中で作り上げている最中で、全くのオリジナル。本もセットも今回のために作られるものなので、大掛かりになると思う。由緒ある日生劇場の舞台に立たせてもらえるので、背筋を伸ばして襟を正して出させていただこうと。
だから、今は身体をつくっていくってところかな。なんたってザンパノは「鋼鉄の肺の男」だからね。「胸部に巻いたクサリを胸筋で切るという芸を売りにしてる」とか資料に書いてあってさ、マジかよって。たぶんまた上半身、脱ぐんじゃない?(笑)今までやった中で一番武骨でワイルドだよ。ハンパない公演数だった舞台「バリーターク」を踏んでなきゃ絶対無理だね。鍛えられましたから。「バリーターク」はアングラというか、ちょっとサイケデリックな幻想みたいなところがあるけど、今回の「道」はドストレートに人間を描いていて、これも真っ向からぶつからないと演じられない作品。新しい扉、また開くんじゃないかな。
これが今の自分の全てで、何一つ必要じゃなかったものってない
僕は舞台とか芝居に関して、僕のところに来たお話は今まで断ったことはないです。信頼して全部任せているので、選ぶというより、来たものはとにかくやる!と。
今回舞い込んできた「道」という作品もそう。タイトルが僕にとっては縁があるというかね。「僕の生きる道」(2003年)だったり「僕の歩く道」(2006年共にフジテレビ系)だったり、タイトルに「道」がつく作品をいくつかやっていて。どういう形になるかわからないけど、僕の人生の道にとっても一つのピースじゃ収まらないような、大きなものになる気がしています。
僕自身が歩んで来た「道」は…、そうだねぇ、いろんなことがあって、人はそうやって今日に至るわけで。これが今の自分の全てで、何一つ必要じゃなかったものってないと思うんです。なので、たとえ他に道があったとしても、近道だとか回り道だとか人生にはいろいろあるのかもしれないけど、どの道でも自分の進む道が正解だと僕は思っています。人って後戻りはできないしね。みんなそれぞれの道を歩いたり、走ったり、止まったり、振り向いたりする中で、僕が今この作品と巡り合えたということは、やっぱり僕の道は合っているんだなと。出合った作品が僕の道標になっているんです。前回の「バリーターク」もそうで、出合えたことによってこの作品が僕に語り掛けてくれる。「いいんだよ、その道で行けよ」って。それでいつも僕は確信が持てる。