ときに癒やし系夫、ときに嫌味な上司、いい人そうに見えて実は悪い人、どんな役も見事にこなす、笑顔が魅力的な俳優・矢柴俊博が久しぶりに舞台出演、しかも翻訳劇ときた。
地人会新社第8回公演「金魚鉢のなかの少女」に出演中の矢柴に意気込みを語ってもらった。
――2015年の一人芝居から久しぶりの舞台出演ですね。今回の舞台への出演を決めたきっかけはなんでしょうか?
これまで舞台のお話を頂くこともあったのですが、なかなか踏ん切れませんでした。
1カ月から2カ月のほとんどの時間を捧げるわけですから、捧げ甲斐がある作品に出合いたいというこだわりが強かったんだと思います。
今回の決め手は、誘ってくれたのが真摯に芝居を作っていらっしゃる地人会新社さんだったことと、あとやはり台本です。
といっても、最初はとんでもなく難攻不落な台本に感じられて、心が決まるまで何度も読んで考えました。そして読むたびにハードルの高さにおののきました(笑)。
観た人を楽しませられる? その責任負える? 海外の設定だぜ? 文化の違いとか越えられる? とか。
でも、ある日再読した時、スポンとすべてが腑に落ちて、この戯曲の素晴らしさが懸念を上回る瞬間がありまして。“これをやらないと後悔する”と感じました。
――今作は翻訳劇です。普段矢柴さんが出演されているドラマなどでは翻訳劇のイメージは遠いような気もしますが、どうでしたか?
大学に在学中、加藤健一事務所さんの養成所に通っていた時期があったのですが、加藤事務所にはたくさんの現代翻訳劇が置かれていて、シェークスピアやギリシャ悲劇などの重厚な古典だけでなく、軽やかなコメディやウェルメイドなドラマが読める環境にありました。
その影響で、大学で旗揚げした自分のチームの1作目に、海外戯曲の二人芝居を上演したりという経験はあります。
その作品でも今回でもそうなんですけど、とにかくあちらの戯曲は自分の主張をぶつけ合いますよね。
この作品では、我が家に訪れた異邦者が原因となって、僕と中嶋朋子さん演じる夫婦が口論になるシーンがありまして。お互いが自分の意見を徹底して主張するんですね。
日本の作品だと、夫婦喧嘩と言えども、ある程度心情を相手が察してくれるという前提が基本的にあって、口論の中にも時折婉曲した言い方をしたり、言葉より態度で示そうとしたりする瞬間があると思うんです。
でもあちらの戯曲では、主張は察してもらうものでなく戦わせるものだという前提がある気がします。
役者としては、ある程度言い合うシーンがあると、どこかで引いた言い方をしたくなるのですが、そこは引かずに主張がへし折られるところまで押し出していかないといけない。
察してもらって同情を買う、という男のしょーもない得意技はまず期待できない。特に僕なんかすぐ同情を買おうするので、エネルギー使います(笑)。
期間:10月6日~10月14日(日)
会場:東京・赤坂RED/THEATER
作:モーリス・パニッチ
翻訳・演出:田中壮太郎
出演:堺小春 広岡由里子 古河耕史 矢柴俊博 中嶋朋子
【HP】http://www.chijinkaishinsya.com/
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