“目が離せない”俳優・中村倫也が愛される“七変化”な魅力
その6:女装姿も披露した美男子/「お義父と呼ばせて」ほか
CM「Simeji」のママ役や、「お義父と呼ばせて」(2016年フジテレビ系)で女装趣味のある息子を演じていたことに気づいた人はいかほどだったか。映画「影裏」(2020年)でも女性的一面を持った役を演じており、共演者の綾剛は映画の舞台挨拶で「めちゃくちゃかわいかった」と絶賛。演技力はもちろんのこと、そのビジュアルでも男も女も魅了するのが中村倫也なのである。
その7:俳優としての全てを集約させた主演映画「水曜日が消えた」
そして、上記のような幅広い役どころを演じてきた彼の“七変化”が一度に見られるのが映画「水曜日が消えた」。基本的にはサスペンスなので、ストーリーの多くを語ることはできないが、中村は物語の中心となる優等生系の最も地味な存在の「火曜日」のほか、バンドマンで交友関係も広い、派手な生活を送る「月曜日」、さわやかなスポーツ男子の「水曜日」、職人気質の「木曜日」、穏やかな植物男子の「金曜日」、陽気でノリのいいオタクの「土曜日」、そして釣りが趣味のアウトドア派な「日曜日」の計7役を演じている。
この7役には“ゆるふわ系”も“クール系”もいて、きっと好みのキャラクターが一人はいるだろう。そんなキャラクターとしての振り幅ももちろんだが、何より驚かされるのは、撮影最終日のわずか1日で、この7役全てを演じわけていたというエピソード。これぞカメレオン俳優だからこそなせる技というべきか…。
人たらし…でも、つかませない本当の素顔
かつて「ザテレビジョン」本誌のインタビューで「これまで演じてきた役柄のどれもが自分の中にある要素」と話していたが、この男には一体どれだけの数の顔があるというのか。
そういえば、「初めて恋をした日に読む話」でインタビューしたとき、初恋に関する質問の回答が、その場で妄想した「コインランドリーで出会った外国人女性との恋」。また別の取材のときは、現場スタッフの似顔絵を描いて披露してくれたりもした。「美食探偵―」で共演している小池栄子も彼を「人たらし」と表現していたが、いつも思いがけない角度からの返球で、現場の空気が和み、自然と笑いが生まれる。一方で、インタビュー中でも“カメレオン”ぶりを発揮し、いくつもの顔を見せる末恐ろしさ。だからこそ、目が離せない。それが俳優・中村倫也という男の魅力である。
文=馬場英美