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<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「育児放棄」【短期集中連載/第2回】

2020/08/31 17:30

映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第2回
映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第2回


ところが、革命は起きませんでした。

売り上げ部数は2万5000部ほど。皆は「絵本で、こんなに売れることはない」と声をかけてくれたのですが、「絵本で」という言葉が入っている時点で負けです。案の定、「そら見たことか」という外野の声が更に大きくなりました。「あのまま、テレビを続けていれば良かったのに」と。

「何かの間違いだ」と自分に言い聞かせて、2作目の制作に入ります。2作目は『ジップ&キャンディ 〜ロボットたちのクリスマス〜』。大好きだった婆ちゃんとの日々を下地に描いた物語です。あいかわらずボールペン一本勝負でしたが、今度は制作スピードが上がり、約2年で完成。「僕に二度の敗北はない」とか何とか言って、世の中にリリースしましたが、負けました。

次に出した『オルゴールワールド』も、同じく結果は振るいません。僕の絵本の売り上げはいつも2万部程度。その存在を知っているのはコアファンと出版関係者ぐらい。まったく世間から相手にされませんでした。

テレビの世界から軸足を抜いてから、かれこれ7〜8年が経ちました。聞こえてくるのは、「キンコン西野、最近、何してんの?」「テレビから干されたの?」「もうオワコンだね」という声。

悔しかったのは、それが作品の評価ではなく、「作品が届いてすらいなかった」ということです。どれだけ素晴らしい作品を作ったとしても、それがお客さんに届かなければ、作ったこととしてカウントされません。これは、全ての作品(サービス)に共通する不変の理です。

僕は「作った」という認識でいるのに、お客さんは「作った」とは認識していません。ここに「作る」という言葉の意味に乖離があります。今後も作品を作って生きていくのであれば、まずは、この「作る」という言葉の意味を再定義し、お客さんと合わせる必要があると僕は考えました。

「作る」とは何か? 

「完成」とは何か?

僕は、制作活動の終わりの地点を「完成」と呼ぶのではなく、制作物がお客さんの手元に届くまでの動線を設計し、お客さんの手に届いた地点を「完成」と呼ぶことにしました。そう再定義したところ、僕が取り扱っていたものは全て「未完成品」になりました。お客さんの手に届くまでの動線設計をしていなかったのです。僕は、お客さんに届ける仕事を、吉本興業や出版社に任せていました。「商売人」として見られたくなかったからです。

お客さんの手に届いて作品は「完成」する


「売る作業」に参加すると、必ず「お金」の話が絡んできます。お金教育を受けてこなかった僕は、お金の話をする大人を「卑しい人」として捉えていて、「そっち側」に行きたくありませんでした。表現者として、汚れたくなかったのです。だから、自分は作ることに専念して、「売る仕事」は吉本興業や出版社に任せていました。

でも、ある時、気がつきました。

「作るだけ作って、売ることは他人に任せています」というスタンスは、一見するとクリエイターのあるべき姿のようですが、実際のところは、「育児放棄」です。僕は周囲の目を気にして、保身の為に、「ヨゴレ役」から逃げてしまっていました。

すべて投げ捨てて、この挑戦を選んだのだろう?

この期に及んで何してんだ。

何を今さら波風を恐れることがある。

あの日のお前の覚悟は偽物だったのか?

下に続きます
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◼︎『映画 えんとつ町のプぺル』特報【12月25日公開】

PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行した2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本デビューを果たす。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数45万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。クラウドファンディングでの合計調達額は3億8000万円を突破。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は6万9000人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

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西野が考えるエンタメの未来や、現在とりかかっているプロジェクトを先んじて知れたり、場合によってはクリエイターとして強引に参加させられたりする国内最大の会員制のコミュニケーションサロン。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。

画像一覧
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