ラスボスは一見、悪くは見えない“お兄ちゃん”に
――第9話以降、第4機動捜査隊の伊吹(綾野)と志摩(星野)が謎の男・久住(菅田将暉)を追う展開が続いていますが、若くて大胆不敵な久住をラスボスにしたのはどうしてでしょうか?
これまでの刑事ドラマには好きな作品がたくさんありますが、最終的には政治家や閣僚、警視庁幹部などの巨悪に立ち向かうという構図が多かった。自分が刑事ドラマを描くにあたっては、そうではないものを書きたいと思いました。ラスボスは“悪いおじさん”ではなく、一見、悪くは見えない“お兄ちゃん”。若くても、ある種のカリスマ的存在として描けるのではないかと…。現に、ネットの世界では一部の人が崇拝され、いろんなビジネスを展開していますよね。誰かを妄信する危うさというのは普遍的でもあるので、“既に存在するかもしれない脅威”として描いています。
――本作で初めて刑事ドラマを手掛け、警察関係者に取材。機動捜査隊の勤務形態などをリアルに反映されたそうですね。
現役の機動捜査隊の人やOBに取材し、監修もお願いしました。みなさん想像以上に真面目で、厳しいルールの下で黙々と仕事をしている。台本にちょっとでも違法捜査に該当する描写があれば厳しく指摘してくれます。4機捜は架空のチームですが、伊吹と志摩もそういう “いい刑事”なんですよね。みんながみんな、こんな警察官だったらいいなと思うような…。特に志摩は「違法捜査はいけない」と思っているし、自分たちが持つ権力にも自覚的。もちろん警察全体を見れば不祥事はあるでしょうが、理想の警察像を描くことで伝えられるものもあるのではと思いました。「アンナチュラル」(2018年TBS系)のときもそうでしたが、職業ドラマとしてリアルに考えたとき、何も組織の内部に黒幕や裏切り者がいる設定にしなくてもいい。
――「アンナチュラル」のUDIラボは実際にはない民間の法医学センター、4機捜も実在しないということで、どちらにも「社会のためには、こういう組織があったらいいな」という願望が込められているではと思いました。
4機捜は「あったらいいな」というより、設定上の必要があった感じですね。1機捜から3機捜は実際に存在し、大所帯で任務の範囲はきっちり決まっていますが、ドラマを作るからにはミニマムなチームにしたい。その方が限定されず新しいことができるし、他の機捜の応援に行っていろんな地域を登場させられるということで、この設定にしました。