――コロナ禍による約半年間の延期を経て、「映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日」がいよいよ公開となりましたが、今のお気持ちは?
内藤圭祐:この映画は本来、「ヒーリングっど・プリキュア」の放送開始に合わせて公開する“春映画”として制作を進めていて、新しいテレビシリーズを盛り上げていこうという意味合いの強い作品だったんですね。ですから、公開時期がずれてしまったのは残念ではありましたけれども、その後、スタッフの努力はもちろん、関係各所の皆さまのご協力もあって、なんとか公開までこぎ着けることができました。今はただただ、安堵と感謝の思いでいっぱいです。
――この半年間で、ブラッシュアップしたところなどはあるのでしょうか。
内藤:延期が決まる前に、作品としては完成していましたから、新たに手を加えるということは極力差し控えています。ただ、プリキュア映画では恒例となっている、劇場で子どもたちが全身で楽しめるような仕掛けは、飛沫感染の防止などの観点から、やはりそのままでは難しいだろうと。そのため、セリフの変更など、若干修正したところはあります。
また、夏から「ヒーリングっど・プリキュア」に登場した新しいプリキュアであるキュアアースは、この映画の本編には出ていないんですね。そうなると、テレビシリーズとの矛盾が生まれて、見に来てくれた子どもたちをがっかりさせてしまうことになる。ですから、そこのギャップを埋めるために、冒頭にキュアアースが登場して映画を見る際の注意事項をアナウンスする、という映像を追加しました。
――今回の映画は、“同じ1日を繰り返す”という設定の下でストーリーが展開します。この設定には、どんなテーマがこめられているのでしょうか?
内藤:元々、春映画として制作されたわけですけれども、春という季節は、明るいイメージがある一方で、“出会いと別れ”といったセンチメンタルな部分もある。「プリキュア」のメインターゲットは未就学のお子さまなので、敏感な彼らが、いろんな出会いや別れによる環境の変化に戸惑ったり、不安を感じたりしたときに、「プリキュアがそばにいるよ」と支えてあげられるような、そんな映画になればいいなと。それがひとつ、大きなテーマとしてあります。
実は、“同じ1日を繰り返す”という展開は、子どもたちには時間の概念がちょっと難しいかなとも思ったんです。でも今回、あえてそこにチャレンジしたかった。子どもたちにも分かりやすく、かつ面白い、そんな見せ方や描き方がきっとあるはずだと信じて、深澤(敏則)監督をはじめ、みんなで組み立てていきました。「時間を止めたい、進めたくない」という未来に対する不安は、誰もが持っていると思うんですけど、それを乗り越えて、明日に進んでいくことの大切さを伝えたかった、と言いますか。「それでも一歩踏み出した方が、明るい未来が開けるかもしれないよ」というメッセージをこめたつもりです。
――そうしたテーマは、奇しくもコロナ禍の現状にも通じるものになっていますね。
内藤:まさに“奇しくも”なんですよね。やはり当初は、入学とか進学とか、お友達が引っ越すとか、そうした環境の変化が起こることが多い時季ということで、こうしたテーマになったわけですけれども、このコロナ禍で、季節とは関係なく、われわれの想像をはるかに超えた環境の変化が起きてしまったという。そう考えると、今見ていただけると、より明確にテーマが伝わるのかもしれませんね。
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