「MIU404」野木亜紀子氏 今後も『描きたいものに合う枠で書きたい』<ドラマアカデミー賞・インタビュー後編>

2020/11/07 08:00 配信

ドラマ

「MIU404」を手掛けた脚本家の野木亜紀子氏にインタビュー(C)TBS

「第105回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」で脚本賞を獲得した、「MIU404」の野木亜紀子氏のロングインタビュー後編。後編では、「MIU404」の視聴者からの反応や、脚本家としての自身の今後について語ってもらった。

「MIU404」は「はみだしが勢いとか面白みに」

――今回刑事ドラマに挑戦したことは、野木さんにとってどんな意味がありましたか?

元警察官の方など、通常より多い4人ほどの監修者についていただき、勉強になりましたね。それぞれの年代、いた部署によって見方も違いましたし、そのお話が興味深かったです。例えば、警察には無線大会、職質大会などいくつか大会がありまして、それを入れるつもりで取材していたのに話数が減ったことで描けなかったのは残念です。ただ、刑事ものはやっぱり大変。現実にありえるラインでエンタメとして構築するのには苦労しました。

――視聴者の反応はどんなふうに感じていましたか。

すごく熱意を持って見てくれた方がたくさんいましたね。Twitterなどにあげてくれたイラストも多かったし、「アンナチュラル」と同じかそれ以上の熱量を感じました。

今回は、(プロデューサーの)新井(順子)さんによく「小学生でも分かるように説明してください」と言われ、「そんな無茶いうなよ!」と言いつつもなるべく分かりやすいようにしたところ、本当に小学生のファンがついてくれて、(機捜車として登場させた)メロンパンカーなんてキャラバンまでやっちゃってびっくりですけれど、間口が広いものになったのは良かったと思います。新井さんの勝利です(笑)。

――以前のインタビューで、「第1話で伊吹が『テンション上がってきた!』と言うのは私が書いたのではなく、綾野剛さんのアイデアだけど、すごく面白かった」と語っていましたが、最終回にも伊吹が「テンション上がってきた!」という場面がありましたね。

クルーザーから脱出した伊吹と志摩(星野源)が「アイラブジャパン」と書いたTシャツを着る場面ですね。あれは綾野さんがあのインパクトがあるシャツを着てみたら気分が上がったそうで、「ポジティブなことを言いたい」とリクエストされたので、「今こそ『テンション上がってきた』じゃない?」ということで決定稿に入れました。

そういうアイデアの出し合いは、綾野さんと星野さんの両方ともされていたので、「アンナチュラル」のときより多かったですね。陣馬役の橋本じゅんさんも自由な人ですから、自由な人だらけで、塚原あゆ子監督はまるで猛獣使いみたいでした。

脚本家から見ると、完成度では「アンナチュラル」の方が高く、図形で言えば正円のイメージ。今回はその円からけっこうはみ出しているんですよ。でも、そのはみだしが勢いとか面白みになって、それはそれで良かったと思いますね。飛び出しの多いドラマ、それが「MIU404」でした(笑)。