――本作に出演した感想はいかがですか?
十二単が出てくる平安時代の登場人物を演じたのは初めてでした。時代劇の中でも古い時代を取り上げているので、触れたことのない世界観を経験させていただけたことはとてもうれしかったです。
しかも、監督の黒木瞳さんは美しく見せるということに関してすごくプロフェッショナルな方なので、楽しみでわくわくしていました。
――黒木さんが監督を務めることで感じたことはありますか?
ご自身も女優さんなので、演じる側の気持ちを分かっていただけることに心強さを感じました。
例えば、今回演じた倫子はすごくピュアで感情を豊かに表現する人だったので、泣くお芝居がかなりあったんですよ。私は涙を流すことがそこまで得意ではないので、そのことを瞳さんに伝えたら「私もよ」ってさらっと口にされて。
大先輩の方がそれを言ってくださったことで、私だけができないわけではないことに気付かされて一気に荷が軽くなったというか、たったその一言でやりやすさがすごく変わったなと思いました。
――逆に、俳優業の先輩ということで緊張はしませんでしたか?
最初は「何でこれができないの?」と思われたらどうしようとか、自分の劣っている部分に不安を感じていました。でも、そんな思いは初日で打ち砕かれましたね。
どんと構えられていて女優ということは忘れて構わないという感じでいてくださったので、ちゃんと監督として接することができました。
――演出に関して監督からどんな指導がありましたか?
そこまでがちがちに縛るというわけではなく、見せ方に関しては美しく見える方法をご指導いただいたんですけど、他の部分に関してはどちらかというと自由にやらせていただいた感じです。
演技の過不足に関して微調整して下さいましたが、基本的にはこちらを尊重してくれていたと思います。
――演じる中で難しかったことは何ですか?
初日は雷との出会いのシーンからだったので、大泣きしなければいけなかったのは大変でしたね。
映像で見れば倫子が最初のシーンから泣くことに驚く人もいるかもしれませんけど、倫子の人生で考えればずっと自信のなかった自分の容姿を雷が優しく包み込んでくれたので、その優しさに触れて涙を流すことはごく自然なことだと思います。
でも、1シーンの中では突然。しかも、悲しくて泣くわけではなく、どちらかといえば感動なんですよ。優しくしてもらったことに対するうれし泣きなので。
そうすると、演じる上でマイナスな気持ちで泣くことは違うので、そこが本当に難しくて。でも、この時代だと恋愛結婚はないはずなので、きっと自分に当たった人はかわいそうだと思いながら生きてきた人だと思うんですよ。
そんな中で自分の人生に光を当ててくれる人が現れたと考えたら、救われた気持ちになるんだろうなと思って演じました。
――弘徽殿女御は現代のキャリアウーマンを彷彿(ほうふつ)とさせる強い女性でしたが、伊藤さんは強い女性に憧れますか?
一般的に分かりやすい強さのようなものだけでなく、私は今回の倫子も最後の言葉を含めすごく強い女性だと個人的には思うんです。もちろん、弘徽殿の方が強い女性に見えるとは思うんですけど…本当に強い女性はちゃんと弱さも持っていてそこを否定しない人、強がらない人なんじゃないかなと思っています。
でも、普通に生きていく中で強がらなければいけない場面も多いので、バランスが難しいですね。ありのまま、揺らがない信念みたいなものがある人は格好良いです。
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