「出生届出したくて…」仲野太賀が“父”に!主演映画「泣く子はいねぇが」で描く人生のリアリティ

2020/11/16 17:13 配信

映画

「泣く子はいねぇが」場面写真(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

リアルで切なく、応援せずにいられない物語


“ナマハゲ”が闊歩するタイトルバックの後、主人公のたすくが登場する。年の瀬、軽バンを走らせて出生届を手に役場を訪れ、受付の男性に「出生届、出したくて…」と口ごもりながら伝えると、「お父さん?若いねぇ」の言葉が返ってくる。たすくの顔には、まだ“お父さん”と呼ばれることに慣れていない初々しさと気恥ずかしさが浮かぶ。たすくは、女の子の父になったばかりなのだ。

赤ん坊の名前を聞かれ、「なぎです」と答えるたすく。はにかみながらも笑顔を浮かべ、「なぎです」「なぎちゃん…」と、我が子の名前を繰り返す。父になったたすくの物語が、ここから始まるはずだった。

だが、そうはいかなかった。大晦日の伝統行事「男鹿のナマハゲ」の日、「なまはげ存続の会」会長の夏井(柳葉敏郎)から強く参加を促され、断り切れなかったたすくはその晩、泥酔し全裸に。その姿が行事を取材に来ていたテレビカメラで全国に中継され、たすくはすべてを失う――。

もともと父親になる覚悟が見えない夫にいらだっていた妻・ことね(吉岡里帆)に愛想を尽かされ、離婚。逃げるように上京したたすくがもう一度、地元とことね、そして父親であることに向き合おうとする物語が描かれる。

仲野が「たすくは本来、主人公になれるようなやつではありません。弱くて、土壇場で逃げて、負け続ける。けれど、そこに人間味とリアリティがあるのだと思います」とコメントしている通り、そこから描かれるたすくの人生はまったく甘くない。

「泣く子はいねぇが」場面写真(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会


しかし、だからこそたすくの人生や選択はリアルで、共感せずにいられない。“大人になる”“親になる”ことから逃げたことのある全ての大人にとって、リアルで切なく、応援せずにいられない物語なのだ。