──テロ予告のあったスクランブル交差点に軽い気持ちで立ち寄る女性が、小説の中で「世界に対して、何も、何もしなかった」と言っているのがとても印象的でした。エンターテインメントであり、かつメッセージ性が強い作品だと感じます。
波多野「思考を止めることの罪というのはあるなと思って作ってはいました。観終わった時に『どういう事件だったのか?』と思っていただけたらと。決して“抜け”のいい映画ではなく、観客の皆さんにお渡しする部分が多いのですが、そういう部分をスルーしてノンストップの展開を楽しんでいただいてもいいし、考えていただいてもいい。原作と違って、登場人物のディテールを詳しく描けてはいないので、西島さんの傷は何だったのか、浩市さんは何をしたかったのか、余白を楽しんでいただけると思います」
秦「僕は、自分はエンターテインメントを作っているというところにずっとプライドを持ってやってきたので、テーマ性だけ一人歩きするのは嫌だなとは思っているんですよね。もともとそういうことを考えている人が、このセリフ、このエピソードに反応してくれたらいいなというのはありますけど、単純に犯人は誰だろう、動機は何だろうという気持ちでも楽しく読んでもらえる構成にしようとは、思っていました。あと、読むのにそれなりの時間がかかるので、その時間を僕の作品に使ってくれた人には、最後に何らかの希望のようなものも少しは残したい。それがないとエンターテインメントではないと思っていて。今回は小説には小説の、映画には映画の救いがちゃんと描かれていて、どちらもエンターテインメントを踏み外してないんじゃないかなと思っています」
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