安田顕が棋士とうつ病患者の“対極”に挑む「演じるのはすごく苦しいし、難しいなと思いました」

2020/12/19 10:00 配信

ドラマ インタビュー

先崎学を演じる安田顕撮影=阿部岳人

安田顕「真剣に取り組みながらも、“適当さ”を心掛け…」


――安田さんは気持ちが沈んだときに、軸になることはありますか?

誰しも暗い気持ちになることもありますよね、突然訪れる漠然とした不安。僕も、昔も今も時々ありますよ。回復に向かうための軸は、やはりお仕事ですかね。お仕事がなかったらここまで来てないですから。振り返ってみたら、お仕事をいただけていることは良いことだなと思っています。

――ドラマの撮影を終えてみて、安田さんの中で心境の変化などはあったのでしょうか。

撮影を終えてみて…ということを考えると、物事を“真面目に真剣に”とらえることよりも、“適度に、適切に、適当に”物事と向き合うという気持ちが大切だということ。そして、その“適当に”という気持ちを持つことが、“真剣に”とらえるよりもはるかに難しいことなのだなと感じました。その難しいものを持っていることがこのご時世大事なことなのだな…と思います。

でも、そういう気持ちも持った上で、僕たち役者は、物事に真剣に取り組まないといかんなと(笑)。「まぁいっか」じゃすまないこともあるので(笑)。真剣に取り組みながらも、“適当さ”を心掛け、なるべくそういう心を持っていたいなと思います。

――ドラマをどんな人に見てもらいたいですか?

現場の皆さんの、この作品に対する思いや、良い作品にしたいという熱量がすごかったのが印象的でした。そういう“熱量”が伝わればいいなと思います。
みんながいいなと思えなくていいので、見た人が「明日、がんばるか」と誰か一人でも思ってもらえれば、届けばいいなと思っています。

「うつ病九段」あらすじ

うつ病により将棋のルールが分からなくなってしまった先崎(安田顕)(C)NHK

2017年7月。順位戦で先崎学九段(安田)は突然、思考停止に陥った。盤面に集中できず、死のイメージが頭をかけめぐる。そのころ将棋界は不祥事に見舞われていた。将棋連盟で広報を担当していた先崎は対応に追われ、さらに映画の監修も担当。その合間に盤面に向かうという、休みのない日々を送り、うつ病を発症した。

先崎は精神科医の兄・章(高橋)が推薦した病院に入院。担当医は長期の休養と、当面の将棋禁止を命じた。極度の集中力を強いる将棋は、治療の妨げでしかなかった。囲碁のプロ棋士でもある妻・繭(内田)は、同じ勝負師としてその復帰を信じ、娘・春香(南)とともに、先崎を必死に支える。

壮絶な闘病の末、気力が回復した先崎は退院。一方、繭は先崎のリハビリの場も兼ね、将棋囲碁教室の開設準備を進めていた。そのオープンの日、先崎も招かれ、若手棋士による対局セレモニーが行われた。それを見た先崎は衝撃を受ける。まるで異世界のゲーム、うつ病で将棋のルールを全く理解できない頭になっていた。

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