第27回山本周五郎賞・第151回直木三十五賞の候補作品で、家族の再生を描いた伊吹有喜の小説「ミッドナイト・バス」(文春文庫刊)の映画化が明らかになった。
東京での仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている主人公。ある夜、バスに乗車してきたのは16年前に別れた妻だった…。一度壊れた家族たちがそれぞれの岐路に立ち、葛藤しながらも再出発していく様子を、バスを利用する他の乗客たちを交えながらていねいに描いた感想作。
主人公・高宮利一役は、「ジャンプ」('04年)以来の映画主演となる原田泰造。利一の元妻・加賀美雪を山本未來、恋人・古井志穂を小西真奈美が演じる。
また、利一の娘・彩菜役は葵わかな、息子・怜司役は七瀬公、美雪の父・山辺敬三役は長塚京三が務める。
さらに、映画「ジャンプ」で監督デビューを果たした竹下昌男監督がメガホンを取り、再び原田とタッグを組む。
3月1日(水)のクランクインを前に、全編ロケーションを行う新潟で製作発表会見が行われ、主演・原田の他、山本、小西らが登壇。撮影に向けて意気込みを語り、原作の伊吹氏からコメントが届いた。
竹下監督からオファーをいただいて、正直うれしかったです。前の作品から約12年たちますが、そのときに一から教えていただいたので、先生に会えるようでうれしかったんです。今はどこか傷つきながらも、一歩踏み出す男をどのように演じるか考えています。
また、今回の役どころが大型バスの運転手ということだったのですが、大型自動車免許を持っていなかったので取りに行ったんです。この映画がなければ免許を取らなかったでしょうし、すごく貴重な経験をしました。温かい作品ですので、みんなで真心込めて作っていきたいと思います。
16年ぶりに元夫と再会するという設定で、あらためて時間を振り返り、家族たちと一緒に過ごしながら、再出発していくまでのお話を描いているので、どのような関係を作り、この女性が自分の今の家族の元にまた戻っていくのかを模索しています。
原田泰造さんは明るくてしゃべりやすいイメージがありますが、役としてどのような距離を取ればいいかまだ分からないので、今は近づき過ぎないよう、極力話し掛けないようにしています(笑)。
純粋に真っ直ぐに主人公のことを好きになるかわいらしい部分と、離婚の経験があり、母から譲り受けたお店の経営を悩みながらも一生懸命に前に進もうとする部分を持ち合わせている女性なので、時には愛らしく、時には切なく、ていねいに演じていけたならば、と考えています。
そして、監督の演出、新潟の景色や空気に助けていただきながら、良い作品にしていけたならと思っています。
新潟は、大林(宣彦)監督の作品「この空の花 長岡花火物語」('12年)の制作に参加したのが初めてでした。そのときは、長岡が中心でしたが、新潟で映画を撮りたいと思ったきっかけになりました。
新潟のロケーションが好きなんです。今日晴れてるなと思っていてもすぐ曇ったり、あまり晴れ間に出合うことは少ないのですが、いろいろな表情があって僕の目から見たらすごく魅力的です。
そして、新潟の方たちと親しくお付き合いさせていただく中での県民気質として感じているのは、寒さとは真逆でとても温かいこと。撮影がとても楽しみです。
それぞれの人生の“夜”を越えていく人々を描いた「ミッドナイト・バス」は、私にとって大きな転機となった作品です。執筆の際には新潟の皆様からさまざまなご助力を賜り、感謝の思いでいっぱいです。
このたびの映画化のお話は本当にうれしく、新潟の人と街の魅力が多くの方々に伝わりますよう、心から願っております。
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