芳根京子、“かなり引きずった役”との出会いで「ここから自分の人生が変わるだろうなと」<Interview>

2021/02/08 07:00 配信

映画 インタビュー

映画「ファーストラヴ」に出演する芳根京子撮影:阿部岳人

――今作のオファーを受けた時の率直な印象を教えてください。

脚本を読ませていただいて「やった!」と思いました(笑)。すごくやりがいのある役だなと思ったし、その時はまだ演じていることを考えずにただうれしかったです。

その後、読み込めば読み込むほどつらさを感じて、環菜という役にゾッとしたり、ドキッとしたりしました。演じられるのかな、という不安もだんだん大きくなっていきました。

――聖山環菜という役を演じるにあたって大切にしたことは?

環菜がどういう人物かによって、この作品の色が決まるなと思ったんです。自分がどう演じるかによって変わるだろうし、周りを翻弄するって難しいなと。なので、今回は頭を使って役を作っていきました。

堤監督ともたくさんお話させていただいて、「私はこう見えたらいいなと思うんです」とやりたいことを伝えて、そこからもっとやってみようと提案していただきました。

普段は感情だけで演じるシーンも、頭を使って作っていきましたね。だからこそ、それがちゃんとできたときは、いつも味わったことがない達成感がありました。

――つかめない環菜の言動が、不気味さを増していました。

台本にはなかったんですが、面会の時にガラスを指でなぞりました。私、人より指がグニャンって反るんですよ(笑)。違和感のある人物にしたかったので、指が反ってたら見たらゾッとするなと思ってやらせていただきました。

笑っていたと思ったら、いきなりスイッチがオフになったり、情緒が不安定で分からない人を想像しました。

――堤監督は芳根さんのことを“涙の魔術師”とおっしゃっていますね。

環菜ってあまりセリフがないんですよ。だから、いかに印象を残せるかを考えて、見え方を意識しました。北川景子さんとの最後の面会のシーンがあるんですけど、段取り(リハーサル)をやったときに涙があふれてボロボロ泣いちゃって。台本では泣くということは書いてないんです。北川さんの目を見てお芝居したときに涙が止まらなくなって。でも、本番に同じことをできる自信がなかったので、慌てて監督の元に走っていって「同じことできません!」と伝えました。

そしたら監督は「ごめん、カット割をもう全部消しちゃった! 同じようにやってくれないと困る〜」って、本当に消しゴムでゴシゴシ消してたんです(笑)。

「困るって言われても困る〜」と思ったんですけど、それに応えることが私たちの役割でもあるので、ドキドキしながら本番に臨みました。でも、本番でも北川さんの目を見ていたら自然と感情があふれていましたね。

――北川さんが相手だったから、感情が引き出されたのもありますか?

それはかなりあります。その撮影時期、私生活やお仕事も含めていろんなことでモヤモヤ悩んでいたんです。それを現場で誰かに話すこともなくて、普通に過ごしていたんですよね。でも、唯一気付いてくれたのが北川さんだったんです。

「芳根ちゃん大丈夫?」って聞いてきてくださって、その時にこの役の関係性と重なる部分があるなと感じました。お食事に行ったら「悩んでると思った」と言われて、「私の心を全部見てる〜!」って思いましたね。

北川さんの観察力や人柄は芳根京子的には話したいなって思うけど、環菜としては全部見透かされているように恐ろしく感じると思うんです。演じる上で、その部分を引き出していただいたなと思います。

北川さんはパワーのある方で、ずっと連絡を取らせていただいています。お子さんとの写真を送ってくださることもありますし、プライベートも心が安らぐ瞬間を作ってくださる大好きな先輩です。

――すてきな先輩ですね。

お食事に行ったときに、私はこういう女優さんになりたいだとか、こういうお芝居をしたいとか、いろんなお話をさせていただいたんです。北川さんは、私の年齢である23歳の頃のお話をしてくださいました。

そこに、勝手に重なる部分を感じたりして。お話したら将来のモヤが取れていく感じがして、すごくホッとしましたし、私も北川さんのような人でありたいなと思いました。