主演女優賞は“恋あた”森七菜 最終回は『台本にはなかったけれど、どうしても涙が』

2021/03/02 06:00 配信

ドラマ

ドラマアカデミー賞主演女優賞を受賞した森七菜撮影=石塚雅人

TBS系ドラマ「この恋あたためますか」で、主人公・樹木を演じた森七菜。“恋あた”と親しまれた本作で、森は連続ドラマ初主演ながらドラマアカデミー賞の主演女優賞を初受賞した。そんな彼女は、初主演の中で何を感じ、演じぬいてきたのだろうか。

正直「できない!」と思ってしまったことも…

――連続ドラマ初主演で、主演女優賞を初受賞されました。まずはそのご感想を教えてください。

“恋あた”の話が決まったときは、まさかの主演で驚きましたし、そこで自分の演技が伝わるかも不安でした。なので、こうやって賞を頂けるとは夢にも思っていませんでした。監督さんや共演の中村倫也さんが優しい言葉を掛けてくださって、精神面でも体力面でも助けてもらいました。

ドラマに出てきたスイーツにも助けてもらって…。シュークリームやリンゴのプリンなど食べると元気が出たし、次の週に出てくるスイーツを楽しみにしていました。「甘いものは人を幸せにします」というのがドラマのキャッチコピーですが、そのことを実感したからこそ、皆さんにも伝えたいと思いました。私自身、甘いものはこのドラマでより好きになりましたね。コンビニに入ると、まず最初に目指すコーナーがスイーツ売り場です(笑)。

――映画や、連続テレビ小説「エール」(2020年、NHK総合ほか)などさまざまな作品に出演されてきた森さん。今回、主演として不安だったことはありますか?

主演はドラマの顔なので、まず「私のことを覚えてもらえるかな」ということ。私を知らない人がすごく多いわけで、どこか印象に残る芝居をしなければ…という意識はありました。共演の中村さんはすごい役者さんで、頼りたい気持ちもあるけれど、やっぱり自立していたい。そういう葛藤を抱えていましたね。

――樹木(きき)は、アイドルとして挫折したものの、スイーツ作りの才能を発揮するという、振り幅のある役でした。演じてみていかがでしたか?

樹木を演じるのは楽しかったです。(樹木という役柄は)天井や底がないから、自分の中で決めたりもったいぶったりすると、樹木が死んでしまう。「次の作品のために自分のこういう面は取っておきたい」とか考えずに、自分の引き出しを全部開け、持っている全てを使い果たしました。ちょっとユニークなセリフもあるので、どれだけ自分で膨らませて言葉にできるのかという課題も…。でも、浅羽社長役の中村さん、“まこっちゃん”役の仲野太賀さんとアドリブで会話していると、自分の中でも樹木の人物像が膨らんでいきました。

――課題を突き詰める日々だったのですね。この作品は全10話でしたが、どのあたりからご自身の演技に自信が持てるようになったのでしょうか。

撮影初日は本当にダメで…、正直「できない!」と思ってしまったことも。実際に演じてみて、樹木の“無限大さ”におじけづいてしまいました。自分で自分に期待していた分、落胆して、すごく泣いたんですよ。そのとき、監督が「樹木はあなたのものだし、このドラマは主演作なんだから堂々としていなさい」と言ってくださって。その言葉に納得して、徐々にリラックスして演じられるようになりました。

樹木が初めてスイーツ作りを仕事にし、試作品を作ったけれど商品化されずに落ち込むシーンでは、初主演の私も実際にダメだと感じていたので、自分と重ねながら演じていきました。