長谷川博己、演技の中で“王道”と“アングラ”の化学反応を見せる【てれびのスキマ】

2021/03/11 15:15 配信

芸能一般 コラム

長谷川博己※ザテレビジョン2017年撮影

映画監督志望から役者を目指し、文学座に入団


長谷川博己といえば、大学生時代、マガジンハウスでバイトをしていた頃、リリー・フランキーの原稿を取りに行っていたことは有名なエピソードのひとつだ。そのことは、リリーもよく覚えていた。

なぜなら「何人かバイトがいた中で、この人だけが俺が壁に貼っていたポルノ映画のポスターに食いついてきた」(「真夜中」2017年9月17日、フジテレビ)からだ。当時、リリーの仕事場は、「徳川セックス禁止令 色情大名」1972年)や石井照男監督の作品など、カルト的な映画のレアなポスターが壁一面に貼られていた。それを見た長谷川は目を輝かせ「どこで買ったんですか!?」と尋ね、店を教えてもらうと、すぐにその店に買いに行ったのだという。

原稿を書いている横で映画談義に花を咲かせ、取りに来たはずの原稿を遅らせてしまうこともあった。当時、彼は映画監督志望。リリーに「撮ってみなよ」と勧められたが、その仲間も機材もない。

そんなとき石井照男監督の「盲獣VS一寸法師」(2004年)のオーディションを受けてみた。尊敬する監督を前にガチガチに緊張し、満足な演技ができず、役者をやるなら訓練が必要だと感じ文学座に入団するのだ(奇しくもこの映画の主演に選ばれたのが、俳優デビューとなったリリー)。

化学反応を楽しむ“マッドサイエンティスト”な俳優


「もともとアングラ的なものがすごく好きだったので、それと真逆のいわゆる新劇の文学座に入ったのがよかったなって自分では思ってる」(「GQ」2017年12月22日)と長谷川は言う。

「自分のことを客観的に見ると、正統派な王道のほうがいい」、けれどその中に「アングラ的な」「大胆さみたいなものをちょっとどこかに取り入れ」(同)ていくという。そんな化学反応を楽しんでいる彼はまさに“マッドサイエンティスト” だ。

文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方」

※『月刊ザテレビジョン』2020年3月号