2020年、年明け早々に放送された「教場」(フジテレビ系)で警察学校の鬼教官・風間公親を演じた木村拓哉は鮮烈だった。
きっちりと整えられた白髪姿、ほのかに色の入ったメガネに隠された雙眼、必要以上のことは喋らず、その鋭い目線で生徒たちを観察している。その圧倒的な渋い輝きは、これまでの木村拓哉像を大きく覆すもので、同作はギャラクシー賞月間賞に選ばれるなど、高い評価を受けた。今年も続編となる第2弾が放送された。
これまで木村が主演してきたドラマは、いわば木村の陽の部分を引き立てるものがほとんどだったが、「教場」は陰の部分を引き出したもので、年齢を重ねた木村の俳優としての未来につながる転機といえる役になったに違いない。
俳優としての木村のキャリアを、当初は「あすなろ白書」(1993年、フジテレビ系)の取手治という主役ではない二番手の役から脚光を浴びただとか、翌年に出演した「若者のすべて」(1994年、フジテレビ系) もやはり主役ではなかったとか、「ロングバケーション」(1996年、フジテレビ系)で主演し、「ロンバケ現象」なる社会現象を起こし最終回で36.7%の高視聴率を掴み、完全に木村拓哉の時代といわれるようになったなどというのは、もはや説明不要のことだろう。
1990年代後半には、彼に影響されていない男子を探すのは困難なほど、木村拓哉は「カッコいい」の象徴になっていた。ぶっきらぼうな口調でボソボソと喋る木村流のリアリズムな芝居は多くの俳優がマネをし、テレビドラマにおける演技の主流のひとつになった。