1990年代の日本の音楽シーンにその名を刻んだ孤高のバンド、フィッシュマンズの軌跡をたどったドキュメンタリー「映画:フィッシュマンズ」が、7月9日(金)より公開される。90年代を代表する名盤『空中キャンプ』など数々の作品を生み出し、今日に至るまで後進のアーティストたちに多大な影響を与えてきたフィッシュマンズ。本作では、これまで語られることのなかったバンドの歴史を、膨大な過去映像とメンバーや関係者のインタビューを通して紡いでいく。
今回、バンド結成時から現在までのすべてを知る唯一のオリジナルメンバー・茂木欣一にインタビューを敢行。前編となる今回は、映画化に際して抱いた思いや映画を見ての感想から、今は亡きバンドのフロントマン・佐藤伸治が生み出した楽曲などについて語ってもらった。
――まず、今回の「映画:フィッシュマンズ」のお話を最初に伺った際の心境はいかがでしたか。
茂木欣一:「フィッシュマンズを映画にしたい」って話を聞いた時は、実感が全然沸かなかったんですけど、そういう話が来るっていうことに対して、僕としては「受け入れてもいいかな」みたいな気持ちもありつつで。
話をもらったのが2018年の夏だったんですけど、その頃僕が考えていたのは、2019年がちょうど、佐藤(伸治)くんが亡くなって20年という年だったんです。そういう(バンドにとっての)節目の時に何かやっておきたいというのはいつも思っていて、ちょうど2019年は対バンでライブをやろうと決めていたんです。
――ceroと対バンされた「闘魂2019」の時ですね。
茂木:そうです。なので、そういう節目の年にもリンクする話だなと思っていて。実はこの話を持ってきてくれたプロデューサーの坂井(利帆)さんが、僕のすごく昔からの友達で。とは言え、話を進める上で友達ということは置いておいて、すごく真剣に「フィッシュマンズというものを記録に残しておきたい」というところから始まりました。
それで何度か話をしていくうちに、フィッシュマンズの歴史をひもといていくような作品にすることになっていき、監督として手嶋(悠貴)さんが登場するんですけど、手嶋さんと話して「あ、この人ならかなり熱くやってくれそうだな」というのもあって、「映画を作ってもらうんだったら、バンド側も全面協力でやったらいいかな」と思いましたね。
――製作にあたって、茂木さんご自身から「こういう作品にしてほしい」という思いはお伝えされましたか?
茂木:僕が伝えたのは、僕らは今もフィッシュマンズとして―それこそ「闘魂2019」もそうでしたけど、“フィッシュマンズの音楽”をライブで鳴らし続けているので、「フィッシュマンズが今も続いているということを届けたいんだよね」と監督に話しました。
佐藤くんの作った曲って、僕の中では「懐かしい」とかノスタルジーのカテゴリーでは全然なくて。どんな時代でも鳴り響く音楽だなと常々思っているので、今も自然に鳴っていることの必然性みたいなこととか、そういうものが映画を見終わった時に伝わることがひとつのテーマとしてありました。
もちろんフィッシュマンズのヒストリーは追ってもらいつつ、映画を見ている中で「今もフィッシュマンズというものが止まらないでいる」ってことが映画から染み出てくればいいかなというか。「今もやってます!」とかそういう感じではなくて、「(フィッシュマンズの音楽は)自然に、いつでも鳴っているんだ」ということが大切で、それが伝わればいいな~ということは伝えたと思います。
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