映画のクランクイン前、茂木がメンバーや関係者に伝えたこととは?
――今回の映画は約3時間に及ぶ大作となりました。改めて、バンドのヒストリーをこのような形でまとめてご覧になっていかがでしたか。
茂木:「僕はフィッシュマンズのことを全然知らなかったんじゃないか」みたいな、ちょっとそんな気持ちにもなりましたね。もちろんバイオグラフィーは全部知っているし、自分は結成の時からそこにいる人間なんだから、「知らないってどういうこと?」って話かもしれないけれど。
今回映画にバンドとして全面協力することが決まって、映画がクランクインする直前、脱退したメンバーも含めて今までバンドに関わってきたメンバーみんなに会って食事会をしたんです。
その時に、「実はフィッシュマンズのドキュメント映画を作ることになったんだけど、みんなに一度だけ語れるだけのすべてを語ってほしいんだ」ってことを、僕からみんなに伝えたんです。僕はそれだけ伝えて、あとは「みんな応えてくれるかな~」と思いながら映画の完成を待つ感じだったんです。
僕は途中経過をまったく見ていなくて、完成した約3時間の映画で初めて一人ひとりが喋っている映像を見たんですよ。そうしたら、一人ひとりが語りにくいだろうなってことも全部カメラの前で、精一杯自分の言葉で語ってくれているのを見て、「本当は心の中はそういう気持ちだったんだ」みたいなことを初めて知るというか。
脱退したメンバーとは、彼らが辞めてから何度も会ってるし一緒に演奏もしているんだけど、「あの時なんで辞めたの?」とか「あの時どういう気分で動いてたの?」みたいなことって普段は話さないわけですよ。
――聞きづらいことですもんね(笑)。
茂木:「突然それを聞いてもさ…」みたいな(笑)。でも、映画の中で彼らは一人ひとりそれを喋ってくれて。バンドの年表に書いてある「この時〇〇があった」っていう出来事に至るプロセスが実はこういうものだったんだっていう、みんなの本当の心の動きみたいなものが初めてわかって、僕はそこにすごく感動しました。それは驚きでしたし、「この映画のために話してくれてありがとう」という気持ちです。
「ハバナ・エキゾチカは最初からものすごく魅力的で、独自なことをしていた」
――本作はバンド結成からデビュー前後までの前半、苦しい時期を経てのポリドールへ移籍しすべてが好転していく中盤があって、そして(実質的なラストライブ)「男たちの別れ」へと向かう終盤と、大きく言って3つのパートに分けられると思います。
茂木:うん、そうですね。
――その中で、デビュー前によくご出演されていた渋谷のライブハウス「ラ・ママ」に小嶋謙介さんが行かれていましたが、当時のライブハウスシーンにおいて、フィッシュマンズが良きライバルと捉えていたバンド、対バンされて印象的だったバンドはどういった方々なのでしょうか?
茂木:当時のバンド名は「ハバナエキゾチカ」って言うんですけど、後のBuffalo Daughter。彼女たちとは本当にラ・ママに出始めてからすぐに対バンすることになったんですけど、最初からものすごく魅力的で、独自なことをしているなという人たちでしたね。名前が変わってからもずっと親交はあって。
――茂木さんも、後にBuffalo Daughterのレコーディングに参加されたことがありましたよね?
茂木:ありました。Buffalo Daughterの『New Rock』と『I』っていうアルバムで何曲かずつ叩いたりしていて。それはBuffalo DaughterもフィッシュマンズもエンジニアがZAKだったっていう繋がりなんですけど、本当にハバナエキゾチカはラ・ママでよく対バンしてましたね。
――フィッシュマンズもBuffalo Daughterも、90年代後半にそれまでとサウンドの質が変わっていったというのも、今のお話を伺っているとなかなか興味深く感じます。
茂木:確かに。あとは、デビューせずに解散してしまったバンドばかりかもしれないけど、KINGBEES(※後にフィッシュマンズのサポートで参加するダーツ関口らが参加したバンド)とかBlack Marketとか、リズムをすごく大事にしているバンドの人たちと仲良くなっていた印象がありますね。
でも、今振り返るといろんなバンドと対バンしてますよ。スピッツとかデビュー前のMr.Childrenとか。ミスチルは桜井(和寿)くんがアコギをジャラジャラ鳴らしながら歌っていた印象はありますね。
7月9日(金)より、新宿バルト9、渋谷シネクイントほかにて全国順次公開
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■「映画:フィッシュマンズ」予告第二弾