新井恵理那、試行錯誤と開き直りが生んだ“自然体” 心掛けは「一貫して嘘をつかない」【連載:Museの素顔 #1】

2021/09/06 16:00 配信

芸能一般 インタビュー

始めは失敗と反省の連続。試行錯誤を繰り返して道が開けた


アナウンサー試験を受けていた当時の自分を「周りに比べて、私の意志って弱いな」と感じていたという 撮影=山下隼

――フリーの道を選んだのは、キー局のアナウンサー試験に失敗し、諦めきれずに…という経緯があったそうですね。当時はどんな心境でしたか?

私、あまり“執着”がなくて、それが自分の弱みだと思っていたんです。試験を受けていたときも、「絶対になりたい!」みたいに執着できないことが辛かったですし、正直、自分を働かせてくれるんだったらどこでもいいという気持ちではあって。もちろん、捨てきれない思いがあったからこそ、フリーアナウンサーという新しい道があると知ったとき、それに懸けてみたいと思うきっかけになったんですが、その道がなかったらなかったで、別の道を探して、そこに全力を投じていたと思います。

――執着がないって弱みになってしまうんですね。

いや~、弱みですよ(笑)。ずっと「アナウンサーになりたい!」って言っている子たちが周りにいっぱいいたので、その子たちと比べると私の意志って弱いなと思いました。執着したのは、弓道がやりたくて、名門と言われていた高校に入学したときだけ。それ以外に人生の中で「絶対!」って思うことってほとんどなかったんです。親に誕生日プレゼントに何がほしいか聞かれても「何でもいい」というような子だったので。欲が出てこないのが私としては悩みで、欲深くありたいなって思うこともありますね。

――それまで、何かにハマることはなかったんですか?

子どもの頃から絵を描くことは好きで、夢中になっていました。ただ流行していることや、芸能人に憧れたり好きになったりということもそんなになかったですし…。世の中のことが見えていないというか、“おいしいものを食べていれば幸せ”みたいな感じで(笑)。だから仕事に関しては、人が“いい”と言っていることにはまず興味を持って触れてみたり、深めていくという「強い気持ちを持たなきゃ!」と思いながらやっていました。

――では、転機になったと思うお仕事は?

初めてバラエティー番組のレギュラーを務めさせてもらったのが、深夜の「業界トップニュース」(2012年、テレビ朝日系)。MCが劇団ひとりさんと土田晃之さんで、私はアシスタントでした。そのとき、「私はこんなに何も話せないし、何もできない」って思ったんです。お二人のマシンガンのようなトークの中に、入る隙間すらもまったく見えないし、任されている段取りもうまくできない、カンペすら読めないし…。「ホントにダメなんだな…」って。仕事らしい仕事を何もしていないのに、なぜかそれで笑いになる、要は“笑いにしてもらっていた”ということですよね。ちゃんと貢献したいと思っているのにまったくそれができていないことが悔しすぎて、もっと話せるようになりたいなと強く思うようになりました。それがけっこう大きなインパクトだったように感じます。

悩める状況を打破するために取り組んだのは「実験の繰り返し」だった 撮影=山下隼

――局のアナウンサーだと、アナウンス室の上司や先輩が指導するという役割もありそうですが、フリーの場合はどうなんでしょうか?

特にいないんですよね。そのときはキャラで通らせてもらっちゃったところがあったし、何より自分自身で一番ダメだと思っていて。でも周りの人はみんなすごく優しくてフォローもしてくれる。だからこそ悔しかったですね。うれしいし、ありがたいし、恵まれてるなと思うんですけど、それじゃダメだってすごく思っていて。たぶん活動を始めて5年くらいは、毎回悔しい思いをしていました。収録の帰りに“これがダメだった”とか“もっとこうすればよかった”というのを思って、ちょっと泣きそうになる…っていうのをいつも繰り返して、「自分の理想とするような状態に全然なれないなぁ」と思いながら過ごしていましたね。

――そんな状況をどのようにして乗り越えていったんでしょう?

実験の繰り返し、という感じでした。“今日はこうだったから、次はこうしよう”って決めて、ちょっと作戦を練ってみたり、“こういうときはこういう感じがいいんだな”と想定してみたり。それを繰り返しているうちに、考えすぎてよく分からなくなった時期があったんです。それが、忙しさも相まって、“あんまり考えなくていいや”っていうマインドになったら、すごく楽になって、楽しくなったんですよね。自由に話せるようになったというか、突然、抜けたような感覚がありました。

――試行錯誤がブレイクスルーにつながったんでしょうか。

そうかもしれないですね。必要以上に緊張していたところもあったと思います。バタバタと忙しくなってきた頃から、余裕がなくて、相手に敬意を払うことが100%できなくなってしまったけど、逆にうまくできちゃった、みたいな感じで。たぶん、いろいろ考えて悶々と溜めていた部分もあったんでしょうね。周りの方は皆優しいから、胸を借りる感じでいったらいいんだなって考えられるようになって、そこからいろいろなお仕事もできるようになった感じがします。