――容保公は緊張感漂う場面も多かったかと思いますが、共演者の方とのお芝居はいかがでしたか?
目と目で、テレパシーのような感覚でお芝居していましたね。思いや気持ちって空気で伝わるじゃないですか。だから今振り返ってみると、撮影期間は空気に対して敏感だったなと思います。それは映画の経験として大きかったです。
――撮影中の共演者の方とのエピソードはありますか?
演技の面では、実際にお話ししたというよりは感じていたというのが1番だと思いますね。
(坂東巳之助演じる)孝明天皇から御宸翰(ごしんかん)をいただいたと(岡田准一演じる)土方歳三と(山田涼介演じる)沖田総司に伝える場面では、リハーサルから本番と同じように演じないといきなりエンジンをかけることができないと思ったので、皆さんには申し訳ないのですがリハーサルの段階から本意気(本番さながら)で演じました。それでも岡田さんや山田さんは僕の演技を受けて返してくださって…。
山田さんは目を見た瞬間に僕が本気だということを感じてくださっていたのを覚えています。映像でもその瞬間の空気感が映し出されていて、とても好きな場面ですね。
こういった経験は初めてで、自分の演技をこんなに真剣に受け止めてもらえるってとても幸せだなと思いました。だからお芝居を通して色んなことを感じたからこそ、逆に撮影以外では話せなくなってしまいましたね。
あ、でも僕が仁丹を持っていたら山田さんに「それなんですか?」って言われました。「食べてみる?」って聞いて、「美味しくない」「美味しいんじゃないの」みたいな会話はしました(笑)。
――初めての映画出演で感じたことなどがあれば教えてください。
緊張感があったせいもありますが、撮影のたびに感動して、毎回泣きそうになっていました。全てに対してありがたいなという思いでいっぱいで…。
役者の仕事ってリレーでいうアンカーじゃないですか。映画なら自分が映るまで、舞台ならそこに立つ瞬間までの制作過程で制作さん、美術さん、技術さん色んな人からバトンを受けていって、最終的に託される。
僕が画面に映るということは、僕のためにたくさんの方が関わってくれたということなんですよね。だから色んな人たちに対してうれしい思いやありがたい気持ちで泣きそうでした。
そしてこの映画の現場でお芝居できるというのも歌舞伎の経験があったからだと思うと歌舞伎の世界への感謝の気持ちもあって…。撮影では毎回泣きそうになっていました。
――撮影中はどのように過ごされていましたか?
舞台とは作り方は違うし、映画作りの醍醐味を感じられたので壁に当たったりはしませんでした。幸いにも撮影日から次の撮影までにいい間隔で準備させていただける時間があったので、次はどのシーンなのかと考えながら準備することができ、混乱することはあまりなかったです。
ただ、どのタイミングで1番痩せておこうということには気を配っていました。作品の後半に江戸藩邸で土方と再会するのですが、そこは松平にとって一番過酷であり、悲壮感が漂う場面だから1番痩せておこうと思い、3日前から絶食しました。
――完成した作品を見ていかがでしたか?
集中力の結晶みたいな映画で、一切の隙がない。見ている間は2時間半、日常からしっかり離れることになります。その非日常を存分に味わえる、楽しめる時間だと感じました。
また、撮影したのが平成最後の3カ月だったのですが、作品では幕末の終わりを描いていて…。撮影中は、時代が変わるという点で、作品と自分が生きている世界とのリンク性を感じていました。
平成の最後に撮った幕末が舞台の作品が令和に公開される。さまざまな時代をまたぐ時代劇になったなと思いました。
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