――円山(清原果耶)さんの「声を上げると誰かが手を差し伸べてくれる」というセリフが印象的でした。
阿部:震災や社会制度に限らず、日本人はみんな我慢しちゃうんですよね。どこの国もそうだと思うんですけど、日本人は特にその傾向が強いように感じます。我慢して、無理やり納得して…それは長い目で見れば、いいことなんてないんじゃないかなっていう。結局は負の連鎖になっていく気がします。戦争もそうだけれども、いつの時代も過ちを認めて背負っていかなければならないはずなのに、それを正当化しようとしてしまう。そういう同調圧力みたいなものがあるなと思って。
この作品で描かれている生活保護に関することもそうだけれど、世の中は声を上げないことが正しいというような雰囲気になっていきがちなんですよね。でも、違うものは違うと声を上げていかなければいけない。それがたった一人の少数意見でも勇気をもって声を上げることは、大事だと思うんです。このセリフで、そういう我慢が生む歪みみたいなものを一つの課題として掲げていると思いました。
佐藤:まさに、そういうことです。
――(笑)。では、お二人がそれぞれ心に残っているセリフは?
佐藤:どの作品でもそうなんですけど、僕はセリフが印象に残ることがあんまりないんです。というのも、シーンを演じるときに、僕はその役の感情の流れで捉えていて、このセリフをこう言おうみたいに考えたことがあんまりないんですよね。セリフはあくまで結果論であって、向き合っているのは感情なので、自分が何を言ったのかだとかをあまり覚えていません。そういう意味で、台本に書いてあったセリフも、果たして自分が本当にその通りに現場で言っているのかもわからないんですよ。その場に身を任せているというか、多分、セリフを言ったり言わなかったりしているんですよね。
だから、印象に残っているセリフは難しいんですけど、理不尽なことに対する怒りや憤り、悔しさなどを(永山)瑛太さんが演じる三雲にぶつけるシーンがあるんですけど、あそこの一連の感情の流れみたいなものは僕にとっては今回、そこがコアだと思っていたし、実際にやってみてもすごく印象に残っていますね。そこで何を言ったかはあまり覚えていないんですけど。
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