――今回の劇場版では、正直に全部話すことをよしとする“言う優しさ”と、あえて話さない“言わない優しさ”。その対比が描かれている部分もあるのかなと思うのですが、マキタさんご自身は、どちらのタイプですか。
“言わない優しさ”に、あぐらをかきがちですね。ズバズバ言うのはあまり好きじゃないですし、自分の人生の中で“言う優しさ”を選択してきた記憶はないかな。
最近、気が付いたんですけど、やっぱり僕は争いごとがあまり好きじゃないんです。“言う優しさ”って、火種をばらまく可能性もあるじゃないですか。だから、そこから生まれるいざこざは、なるべく避けたいです(笑)。
――あらためて、劇場版『きのう何食べた?』の見どころを教えてください。
劇場版は、ドラマ版より深いところのシロさんとケンジが観られるんじゃないかなと思います。日常のささいなこと、日々のディテールに大事なものが宿っているんだよ、目の前にあるものをかけがえのないことだと思って大事にしましょう…ということを、ちゃんと伝えている映画になっているんじゃないかな。
ジェンダーの問題など極端なものと思ってしまうかもしれないけど、実はそうじゃない。おいしいものを食べたら「おいしい」と思うこと、相手の喜ぶ顔が見たくて好物を作る、目の前にいる人と楽しい会話をしたい。そういう日常のひとつひとつを、自分から楽しんで一生懸命やることが人生を楽しむ秘訣なんじゃないかな。そういった部分を丁寧に描いているところが、見どころになっていると思います。
ドラマ版同様に、食べものが重要なモチーフとして使われていますしね。僕もたまに料理するんですけど、ちょっと作ってみようかなと思える細やかさも「何食べ」のポイントですよね。
取材・文=吉田光枝
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