堤幸彦監督から見た“嵐”の魅力「五人五様の表現者であり、集まると強力なエンターテイナーになる」<Interview>

――この作品を制作するようになった経緯から教えてください。

お話を頂いたのは2018年だったと思います。僕も20代の頃からいろんなアーティストのライブ収録をしていて、特にジャニーズさんには数多くのチャンスをもらってきました。

ライブでは会場の制約やルールがあって、なかなか思うように撮れず、究極のかっこいい作品を作るというのが難しいんですけど、今回は話し合いの結果「撮影のためにライブを1日やろう」ということで始まりました。だったので「それなら」と(笑)。

それで最初に思い浮かんだのが“5×20(ファイブ・バイ・トゥエンティー)”ということで「100」という数字。「カメラ100台で撮りましょう!」と提案しました。ダメならダメでいいと思っていたんですが、結果、それ以上の台数で125台になりました(笑)。

――撮影のためにライブを行う。この大前提があることで、これまでのライブ収録とは全く違うことができますよね。

そうなんです。ジャニーズさんの舞台では(撮影スタッフが)ステージに上がらないという暗黙のルールがありまして、お客さんと被写体の間にカメラを入れて邪魔をしないというのももちろん常識的なルールになっているんですが、「いままでにない形で撮影出来ないか?」と提案をさせてもらい、かつ、まだ東京ドームでのライブ収録で使ったことのないドローンを縦横無尽に使うことも含めて話し合いました。

――いつもは出来ないことに挑戦されたんですね。

の主演映画を撮っていた、普段は映画を撮ってるカメラマンにもたくさん集まってもらったので、その日は他の映画やドラマの撮影が止まってしまうような状況だったと思います。皆さん、一兵卒として参戦していただいたんですが壮観でしたね。

例えば映画の現場でエキストラを含めて大勢の人がいる瞬間もありますが、撮影する側がギラギラと大勢でカメラを構えているのは初めて見ましたし、一生に一度しかないと思います。積年の思いの丈を遂げることができたので、本当にやっていて楽しかったです。

――ちなみに、今回125台のカメラを使用されたということですが、東京ドームでのライブシューティングだと通常は何台ぐらいのカメラを使いますか?

多くて4、50台ではないでしょうか。それぐらいあれば相当立派な映像作品ができます。

――その3倍のカメラを使って、やりたかったことが実現できたわけですね。

はい。撮影自体は楽しかったんですけど、その代わり、編集は時間がかかって地獄のように大変でした(笑)。でも、2020年に入って新型コロナウイルスの影響でステイホーム時期に突入して、他の作品の撮影がストップしてしまったので、編集室に足しげく通って1カットずつ確認しながら時間をかけて作ることができました。

自分の会社の部下も含めて、3〜4人のディレクターが曲の担当を決めてつないでいく。それを何度も何度もやって、その上で125台のカメラに映っている映像と作ったものを見比べながら、「ここはこうしよう」とか、パズルを作り直すようなことを延々とやった結果が今回の作品なんです。

――ライブ自体の演出は松本潤さんが担当されていますが、この映像作品を作るにあたって松本さんと打ち合わせは?

何度もしました。1年半以上ライブを見せてもらいながら、「この曲では何を一番訴えたいのか」などを教えてもらい、かつ話し合いながら、こちらも撮影の手法を考えていきました。僕も舞台の演出をやる端くれですが、“演出家・松本潤”はそういう立場から見てもえらく細かくて“志の高い”演出をします。「ここまでやるか!」というぐらい微に入り細に入りを徹底しているんです。

自身もステージで歌うわけですが、振り付けの方に自分のポジションに入ってもらって、自分は2階席の一番前の全体を見られる位置から指示を出したりして、全体のバランスも見ていました。東京ドームって平面じゃなくて立体ですからね。それもちゃんと頭にあって計算しているんです。

それでいて、今度は演者としてステージに立つと、「あいつ、振りを間違えないんだよね」って櫻井翔くんが言ってたんですが、それぐらい表現者としても素晴らしいんです。そういう意味で、すごい演出家だなって。

――意志とレベルの高さがうかがえますね。

松本くんが14歳の時、まだになる前だけどドラマ「ぼくらの勇気 未満都市」(1997年、日本テレビ系)に出てもらっていて、2002年に映画「ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY」で5人と会い、その後の大活躍を見てきているので、5人ともそうなんですけど「あいつら、立派になったなぁ」って親戚のおじさん的な思いもあります(笑)。

プロ同士の会話もありつつ、甥っ子たちが立派になったんだから恥をかかせられない。うまく撮ってあげたい!っていうプライベート感みたいな特別な感情もあって、非常にいろんな思いが錯綜していたのは確かです。