ディーン・フジオカ、“故郷”が舞台の作品で声優初挑戦「最初はお芝居の距離感を取ることに戸惑っていました」<Interview>

ディーン・フジオカがインタビューに応じた 撮影:伊東武志

――脚本を読んだ感想は?

最初に脚本を拝見させていただいた時に「あ、物語の舞台がハワイアンセンターの話なんだな」と思いました。自分が生まれるずっと前からある施設ですから。まだ子どもだったから記憶には残っていないんですけど、親に連れられて行ったことがあるはずなんです。

ハワイアンセンターでどういう方たちが働いていて、どんな日常を過ごしているのか。何をきっかけにその道を選んで人生を歩んでいるのか、すごく興味が湧きました。

福島は自分にとって縁が深い土地。久しぶりに福島で過ごした頃のことを思い出しましたし、人間の成長物語としてもエネルギーがある作品だなと思いました。

――子どもの頃、ハワイアンズに行っていたということは、実際にフラガールを見たことがあるのかもしれませんね。

何しろ、まだ小さい頃だったと思うので。その時の写真を見たり、親から聞いたりした話などでかろうじて覚えているという感じですね。

――福島県に住んでいる人たちにとって、ハワイアンズやフラガールはとても身近な存在ですか?

子どもだった僕もよく名前を聞いていましたから。福島県民だったらみんな知っているんじゃないかなと思います。

――今回が声優初挑戦なんですよね?

普段、役者がアフレコ収録をするということとは、またちょっと違うじゃないですか。簡単に言うと素人ですよね。声優としては全くの新人。もちろん脚本を読んで、自分が声を担当する鈴懸というキャラクターを理解してから現場に行きましたけど、特に演技プランのようなものは持たずに臨みました。

監督をはじめとするスタッフの方たちがどういう作品にしたいのか。監督の演出プランというものを受け止めながらその都度、全力で応えていくという作業だったような気がします。

――声の芝居で難しいと感じたところはありますか?

最初の頃は、お芝居の距離感を取ることに戸惑っていました。役者としての芝居はあくまでも自分の視点で、自分の体から声が出てくるんです。だけど、アニメーションに声を入れる作業の時は、もうすでにカット割りが全部出来上がっているんですよ。アングルやサイズなどが、どんどん目まぐるしく変わっていく。その中で、自分が発する言葉の距離感だったり、トーンの調整をすることが難しかったです。

監督にいろいろ導いていただきながら、鈴懸というキャラクターを作り上げていった感じですね。

――鈴懸のセリフは決して早口ではなく、相手に対して丁寧に言葉を届けているという印象を受けました。

鈴懸もいろいろな過去があった上で、今ここにいるということをどう感じさせられるのか。その人間の佇まいを自然な形で表現することができれば、想像の余白みたいなものが生まれるのかなと。

鈴懸は、フラガールになるために頑張っている主人公の日羽たちよりも長く生きているし、ハワイアンセンターにいる時間も長い。そこの時間の蓄積みたいなものを佇まいとかで感じさせられたらいいなと思っていました。

――アニメのキャラクターから自分の声が聴こえてきた時の感想は?

すごくうれしかったですね。声優の仕事が好きだなと思いました。レコーディングブースで声を入れる作業はまだ不慣れなところがありますけど、キャラクターの声を担当するということは面白いなと感じました。

――以前から声優に挑戦したいという思いがあったんですか?

いつかやれたらいいなと思っていたし、何でまだやっていないんだろうっていう気持ちもありました。今回、自分の故郷が舞台の作品という縁のある形で初めて声優のお仕事ができるプロジェクトに巡り合えたことは、とても幸運だったなと思います。

――今後、声優として演じてみたいキャラクターは?

もし、演じたいと思うキャラクターが見つかったら、自分でプロジェクトを作ってしまうかも。でも、強いて挙げるとしたら「新世紀エヴァンゲリオン」が好きなので、エヴァの世界観に入ってみたいですかね。例えば“初号機”の声とか。雄たけびだけ上げて終わるっていうのも面白いですよね(笑)。僕は庵野(秀明)さんの大ファンなので、いつか機会があったら出てみたいです。