今後地上波オンエアNG!? 衝撃ドキュメンタリー映画「さよならテレビ」日本映画専門チャンネルでテレビ初放送

2021/12/10 21:30 配信

映画

「さよならテレビ」土方宏史監督インタビュー

【写真を見る】衝撃作「さよならテレビ」を送り出した土方宏史監督


土方監督は1976年生まれ。上智大学英文学科卒業後、東海テレビに入社。情報番組やバラエティー番組の担当を経て、報道部に異動。2014年に『ホームレス理事長 -退学球児再生計画-』でドキュメンタリー映画を初監督。2016年に本物のヤクザの現実を記録することで見えてきた人権問題に迫った『ヤクザと憲法』を送り出している。

——映画「さよならテレビ」が、初めてテレビで放送されることへの思いから聞かせてください。

うれしいですね。シンプルに観てもらえる機会が増える。東海テレビの放送はエリアも限られ、観られる人はどうしても少ないですけど、有料チャンネルでも全国放送となると観てもらえるチャンスが増えますから。

——テレビ番組版が他の地域で放送されたことはあったのですか?

さよならテレビ」はないですね。自社の再放送もないですから。

——そうなんですか!?

もちろんです。どこの局が好き好んで流しますか(笑)。このドキュメンタリーは流してくれませんよ。別に変なものが映っているわけじゃないんですけど。地上波ではなかなか流してくれないので、それがテレビで流れるのは、うれしいですね。

——PRとして考えたとき、この作品のウリはどこになるでしょうか。

皆さんが、テレビ局やメディアに対して、こういうものではないかと思っていることが少なからず映っているところですね。それは我々も意識して撮りましたし、テレビが抱える問題、課題と思われているところが撮れています。

テレビは弱い人の立場に立って考えるということを使命として掲げてはいるけども、実践できていないとか、自分たちが考えているほど立派な存在じゃないよというところは表現できているかなと思います。

——企画の始まりをうかがいたいのですが、テレビに対する危機意識があったのでしょうか?

世の中の人たちがテレビに対して「マスゴミ」と言う。それに対して自分の中で思い当たる節もあるし、他の人の番組で何でこんなことをやるんだろうということもある、一方で、これは批判・非難されることではないだろうというときもあるので、その両方を見せたいなという思いはありました。

——番組提案書に「さよならテレビ」という言葉はあったのですか?

それは入っていなかったです。確かきちんとしたタイトルは企画書に書いていなかったと思います。早い時期に、阿武野(勝彦)プロデューサーが、「これは『さよならテレビ』だな」と独り言みたいにつぶやいて、彼はタイトルとして言葉にしたのではなかったのかもしれませんが、それを聞いて「おっ!」と僕は思って。恐らくそういう作品になるだろうな、「さよならテレビ」というタイトルを付けて、しっくりこないような作品にならないようにしようと思ったので、これをもらおうと。

スタッフ、カメラマンの中根(芳樹)に話すと、「いいタイトルだな」と言ってくれたので、早い段階でタイトルは決まっていました。

——タイトルに託したのはどんな思いなのでしょうか? テレビはさよならされても仕方ない存在で、それをどうにかしたいとか?

もう少し客観的な立場での見方ですけどね。世の中から退場しつつある、ということを感じているので、いい・悪い、悲しい・うれしいは置いておいて、そういう意味での「さよならー」なのだという気がします。

「さよならテレビ」土方宏史監督



——人々のテレビ離れを痛感されていますか?

そうですね。例えばNetflix(ネットフリックス)などの分かりやすい映像媒体だけじゃなく、TwitterをはじめとするSNSだとか、趣味が多様化・細分化して、マスじゃなくなってきていて、マスなものが追いやられつつあるなという感覚はあります。

——抗うように「テレビは面白いものなんだ」という意識はありますか?

そうですねえ…。テレビだけの強みはどんどんなくなっているなと思います。「テレビでもできる」という言い方の方が的確かもしれないですね。テレビだからこそ面白いものって本当になくなってきているんじゃないでしょうか。これはテレビにしかできないというものは、僕には思いつかないですね。「テレビにもできる」ということはありますよ。けど、テレビならではということはもうないんじゃないですか。

フットワークの良さで言えば、TwitterやSNSの投稿の方が早いし、深さで言えばNetflixの方がよっぽど重厚なものを作る。ワイドショー的なあおりっぽい、たきつけるようなのは…いやそれもネットの方が強いですよね、炎上系・迷惑系の方がテレビよりあおるから。そこもテレビは中途半端ですよね。

百貨店が抱えるジレンマと同じですかね。百貨店の苦境についての報道は他人事と思えないですよ。「百貨店」という定義からすれば、専門性を持つわけにはいかない。テレビも「マスコミ」だから、マスを対象としなければマスメディアじゃなくなっちゃう、そこのジレンマはありますね。自分たちの存在意義自体が問われているというか。

生きていくためにはそこを捨てないといけないんだけど、そこを捨てたら、それは百貨店なの?というのと一緒ですよ。食料品売り場は売れるからそこに特化しちゃおうということもできるんでしょうけど、それって百貨店なの?というのと一緒で、テレビもそんな気がします。テレビも放送外収入、不動産だとかで儲けることもできるんでしょうけど、それはテレビなのかというところに立ち返っちゃいますよね。

——今回の放送で見てほしいターゲットはありますか?

それは強くあります。若い人たちです! テレビには興味ないよという人たち、テレビを信じていない人たちこそが一番のターゲットです。

あとは、あまねくすべての会社員です。会社に所属している人たちに見てほしい。描いているのはテレビの問題ですけど、たぶんサラリーマンなら感じている部分、共通する部分があると思うんですよね。空気感のようなもの、それは会社に所属している人なら分かってくれるかな、面白く見てくれるかなという気がします。こういうことってある!と思うんじゃないかなと。

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