佐藤二朗、「幸福感や達成感があったときの一服は、特においしい」<人生のIPPUKU>

2022/01/12 00:00 配信

映画

年を取ることって悪いことばかりじゃない

「佐藤家では、妻は最高のアイドルですから」と笑顔で話す 撮影=中川容邦/スタイリスト=鬼塚美代子(アンジュ)/ヘア&メーク=今野亜季(A.m Lab)


現在52歳。今やマルチな活躍で幅広い世代の人気を獲得している佐藤だが、なかなか仕事に恵まれず“暗黒の20代”を過ごした過去も。

20代は俳優として芽が出ず、非常に苦労した時期。気分が落ちてしまうこともよくありました。僕はこう見えて真面目なものですから、特にその頃の僕は何事に対しても考えすぎてしまうことが多くて。世の中に出るために必死になって、どうしたらいいかと日々考え込んでいました。今ではフラットに現場に臨んだほうが作品に対していい影響を与えるということもわかっているので、そんなに考え込むことはないですが、その頃の僕はそうやって生きるしかなかった。振り返ってみると、その時代に妻とも出会っていますし、大切に思える人々との出会いも果たしているので、とても貴重な時代なんですけれどね。

苦しい時代を経て、改めて年齢を重ねることのよさを実感している。

もしタイムスリップをして、20代の僕に「深く考えすぎちゃダメだよ」と声をかけても無理でしょうしね。その頃はそうやって生きることが大事な時期だったんだと思います。悩んだり経験値を重ねることで、今の僕があるんだなと。先日、30年ほど前に通っていた養成所の同期6人とリモート飲み会をしたんです。ともに芝居を学んだ者同士が、白髪も増えて老眼の話をしたりしているんですが、それぞれが頑張っていることがわかってすごくうれしくて。時間が育てる感情や友情ってあるものだし、年を取ることって悪いことばかりじゃないなと思いました。老眼は本当に不便ですけれどね(笑)。

「時間が育てる感情や友情ってあるものだし、年を取ることって悪いことばかりじゃないな」 撮影=中川容邦/スタイリスト=鬼塚美代子(アンジュ)/ヘア&メーク=今野亜季(A.m Lab)


最新主演映画「さがす」では、指名手配犯を見かけた翌朝に姿を消した父を演じ、観客にまた新たな表情を見せてくれる。

自分がどうしてもやりたいと思っていたことを仕事にできて、すごく幸せです。僕が“必死に生きている”と感じられるのは、芝居をしたり、映画を作ること、脚本を書くことでしか得られない感覚。その揺るぎない想いがあるからこそ、“暗黒の20代”も頑張れた気がしています。

取材・文=成田おり枝

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