「全力坂」放送3000回記念ランナーは番組ナレーターの吹越満!「キメ顔はいらない」番組Pがあくまでも“全力”にこだわるわけ

「全力坂」放送3000回でランナーを務める俳優の吹越満 (C)テレビ朝日

45秒の間に、自身の持ちうる全力を目の前の“坂”に賭ける!2005年にスタートし、16年以上もの間人々から愛されてきたテレビ朝日のミニ番組「全力坂」(関東地区ほか:月~木曜、深夜1時20分)が1月11日(火)の放送で3000回を超える。記念すべき走者は、ナレーションを担当する俳優の吹越満。どんな経緯で吹越が選ばれたのか。また、これまでに福原遥、弘中綾香など多くの女性芸能人やアナウンサー、はたまた仮面ライダーなど、著名な人物(ヒーローも含む)が走っているが、人選は何をポイントとしているのか。昨年から始まった「メンズの坂」と「女性が走る坂」の“違い”まで、番組プロデューサーの佐藤太一氏に話を聞いた。また走者を務める吹越のコメントも掲載。

「全力坂」のルーツ。偶然見かけたリクルート姿の女性から企画がスタート


「こんなに長く続けられるとは正直なところ思っていませんでした。ただ女の子が坂を駆け上って息を切らすだけの番組…実験的といいますか、本当にそんなことをさせていただいていいのかなという複雑な想いもありましたが、そうですね、シンプルな企画だからこそご支持をいただけたのかなと感じています」(佐藤太一氏/以下同)

その番組もついに3000回。1000回の時は東京・信濃町にある千日坂を走って、1000回の記念とした。2000回では同じ千日坂を双子で走ってもらい「×2」で。だが3000回。三つ子はなかなか見つからない。「ナレーションの吹越さんとも、どうしましょう、何か面白いことをしたいですねというお話をしていた中で、吹越さんが走るのはアリですかと話したら『ああ、走ろうか?』と。吹越さんは元々暇があればボクシングジムに通っている方で、体も鍛えてらっしゃるんです。ノリノリの全力で駆け上っていただきました」

そもそもこの番組は、一人のリクルート姿の女性から始まった。「元々この6分の番組枠は一年ごとに企画が変わる構成でした。しかし2005年時、ある作家さんが『東京渋谷区の某坂で不思議な体験をした』と。その作家さんが坂を歩いて下りていたところ、前方からリクルート姿の女性が、ものすごい形相で坂を駆け上がってきたそうです。何をそんなに急いでいるんだろう、遅刻しそうなのか、誰かに追いかけられているのか…。様々な想像がふくらんだと企画会議で話され、皆が『それは面白い』となり、一気に企画が進みました」

会議でもその女性が坂を全力で駆け上がっていた理由について談義が行われた。女性1人でこれだけ想像が盛り上がる。これを毎回違う人物が、違う衣装で違う坂を走ったら、どれだけ多くの背景、物語が視聴者の脳裏を駆け巡るのか。その面白さが「全力坂」が生まれた理由である。

キメ顔・可愛いはいらない。必要なのは“全力であること”

なりふり構わぬ全力疾走の美しさが「全力坂」の魅力(走者・関川ゆか) (C)テレビ朝日


基本、走者はオーディションで決められる。多い時には1000人以上もの応募者が。近所の公園で50メートルほど走ってもらい、出演者が決まる。「そのポイントは…他にも審査員がいるので僕の場合ですが、番組が『全力坂』ですので、いかに“全力”で走っていただけるかどうか。足が速い、遅いではない。応募者はモデルさんやタレントさん、デビューしたてのアイドルさんなどですが、そういう方々は普段、キレイに撮られることがほとんどじゃないですか。『全力坂』が求めているのはそこじゃない」

まさに“鬼気迫る”。髪を振り乱して、息を切らすほどの全力の走りを見せることができるかどうか。自分を可愛く見せたいという気持ちは「全力坂」ではいらない。「全力で物事に当たるということは、あまり日常的ではないと思うんですね。人が全力で何かに打ち込む姿は、それ自体が美しく映りますし、なぜそこまで全力なのか、こちらとしても想像力を刺激されます。『全力坂』は仕事や学校の後の深夜に放送される番組。全力で頑張る人の姿を見て、今日自分は本当に頑張ったのか、明日は頑張ろう、そう思っていただけたら素敵だなと思って、僕は、その“全力度”で出演者を決めさせてもらっています」

現在、毎月 第1・第3木曜は「メンズの坂!」として、初回は三浦涼介、その後も縣豪紀、佐藤友咲、新納直(真夜中の12時)、安部伊織などのイケメンが出演。「数年前から男性が走る姿も見てみたいという話は聞こえていました。現在は多様化の時代ですし、男性が走るのもいいんじゃないかとこの秋から企画がスタート。やはり全力で取り組む姿は男女変わらず美しいですね。力をもらえるのも変わらない」反響も大きく、番組のSNSには特に女性からのフォローが増えたという。

ただ、男性が走る姿を撮るのは、女性が走る以上に苦労が伴う。「単に身体的な違いで、男性の方が足が速いので並走するカメラが置いていかれるんです(笑)。女性ならなんとかついていけるところを、『全力坂』ですから男性も手加減してくれませんよね。それでだんだんカメラが引き離されていく画に(笑)」

男性の場合も女性と同様、「全力坂」はキメ顔を求めていない。その人が全力を出したらどんな顔になるのか、それを醸してくれる男性を選んでいるのだという。

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