「自分が決めた幸せを他人に左右されてはいけない」脚本家・吉田恵里香が、ドラマ「恋せぬふたり」で届けたいメッセージ

商店街を歩く羽(高橋一生)と咲子(岸井ゆきの) (C)NHK

1月10日(月)からNHKよるドラ枠で放映中のドラマ「恋せぬふたり」(夜10:45-11:15、NHK総合)。他者に対して恋愛感情を抱かない「アロマンティック」、他者に対して性的に惹かれない「アセクシュアル」というセクシュアリティを持つ男女の同居生活を「ラブではないコメディ」として描く本作は、放送開始前から大きな注目を集めた。

第1話では恋愛がわからない自分に悩む兒玉咲子(岸井ゆきの)が、「アロマンティック・アセクシュアル」を自認する高橋羽(高橋一生)に出会ったことから、初めて自身のセクシュアリティに向き合い、「恋愛感情抜きで家族になりませんか」と高橋に同居を提案。第2話では咲子の家族に同居の件がばれ、やむを得ず恋人同士のふりをして咲子の実家を訪ねるが、恋愛や結婚を是とする家族との価値観のズレが表面化した。本作の設定や登場人物にどんな思いを込めたのか、また作品を通じて届けたいメッセージは何か。インタビュー後編の今回は、脚本を担当する吉田恵里香氏に話を聞いた。

恋愛の押し付けになってるんじゃないかと思っていた

第2話、家族の前で恋人のふりをする羽(高橋一生)と咲子(岸井ゆきの) (C)NHK


――まず、このドラマの企画に吉田さんが関わるようになった経緯を教えてください。

一昨年、脚本を執筆した「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(※通称:チェリまほ)」というドラマがありまして、そこである登場人物のキャラクターを、原作とはちょっと角度を変えて、アロマンティックなのではないかという風に描写したんです。そのことについて取材を受けたネットの記事を、NHKの押田友太さん(企画・演出)が見てくださって、声をかけていただいたところから繋がりました。

――最初に「チェリまほ」でアロマンティックのキャラクターを出そうと思ったのはどうしてだったんですか?

自分自身はラブコメや恋愛ものが好きでずっと書いてきたんですが、でもやっぱり、最終的には恋愛をしないと幸せじゃないとか、恋愛をしたことで人生が変わったという描写になりがちで、それって押し付けになってるんじゃないかと思っていたんです。それと、多様なセクシュアリティや性自認の方を描くときに、言葉としては認識されていても、なかなか物語に描かれない人達もいて、そこにも違和感がありました。

――では「チェリまほ」の後も吉田さんは、アロマンティック・アセクシュアルというテーマに関心を抱き続けていたんですね。

そうですね。簡単に扱ってはいけないとは思っているんですけど、しっかり取り組もうと思って企画を出しても、メインの題材にするところまではいかないことが多かったんです。だから、このお話をいただいたときはすごくうれしかったです。