──近年は、ホラー映画「黒蝶の秘密」(2018年)での恐怖体験に怯えるシリアスな役どころや、コメディ映画「恋するふたり」(2019年)での減らず口のチャラ男など、幅広いキャラクターを演じ分けています。ジャンルによって、演技を意識的に変えることはあるのでしょうか?
ジャンルによって変えることはないです。どんな作品に対しても取り組み方は一緒です。映像作品の場合は順撮りじゃないので、そのシーンの前後の感情を考えて、演技を組み立てるようにしています。だから事前に台本は気持ちが分かるまで徹底的に読み込んでいます。
「黒蝶の秘密」はホラーだからこうしようという意識は特になかったですが、恐怖シーンで抜かれる(顔をアップで撮影される)時の表情は気を遣いました。驚いたり、怯えたりする表情って、けっこう繊細なんですよ。
「恋するふたり」は台本がすごくて、僕の役はほぼ長セリフだったんです。現実にはいないだろうというキャラクターだったんですが、映画なので振り切って生々しく演じようと心掛けました。
──染谷俊之にとって演技とは?
演技って何が正解で、何が間違っているかがない。正解がないからこそ難しいし、面白いものですね。あと、作品や作風によって異なりますが、基本的に僕は自分の演技に満足しちゃいけないと思っています。それって自己満足に過ぎなくて、評価をしてくれるのは観てくださった方々なので。これは僕自身の価値観ですが、演じ終わったあとに「ちょっとうまくいかなかったな」という気持ち悪さが残るくらいがちょうどいい。それが「次はもっと頑張ろう」というモチベーションにもつながります。
──今後はどのような役者になっていきたいですか?
自分はまだまだ未熟ですし、できることがいっぱいあると思うので、映像にしろ、舞台にしろ、声のお仕事にしろ、もっともっと自分を磨いていきたいです。
そして、おじいちゃんになっても役者を続けられていたら幸せですね。でもそれまでにケガをして続けられなくなるかもしれないし、他にやりたいことが見つかっているかもしれない。やっぱり未来のことは分かりませんね(苦笑)。ひとまず今年は、昨年以上にいろいろチャレンジして得るものが多い1年にしたいです!
取材・文=河合哲治郎
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