NHK「プロフェッショナル―」番組スタッフが語る“継承と挑戦”

2017/04/22 07:00 配信

芸能一般 インタビュー

「プロフェッショナル―」これまでの歩みと新たな挑戦に迫った(C)NHK

10周年の節目に放送した“新たな挑戦”


――そうした継承を経て、昨年、番組は10周年を迎えました。新たな挑戦として、10代がプロフェッショナルに仕事の極意を学ぶという特別企画も放送されましたが、この企画の意図はどこにありましたか?

あれは、番組公式アプリを作ったのが始まりですね。「プロフェッショナル―」風のムービーを作れるアプリで、これをいかに番組と連動させるかという中で生まれました。プロフェッショナルに弟子入りしたいという方に、エントリーシートと一緒に、自己PR動画としてアプリで作ったムービーを送ってもらって、それを見て選考の材料にしました。

応募告知後には、10代以外からも「自分もやりたい」とか「18歳じゃないと駄目なんですか?」という声が届きました (笑)。実際はロケ期間が限定されていたのがハードルになって、応募数は限られたのですが、放送後も含めて反響は大きかったと思います。

――それから、2017年の放送では、初めて競走馬をフィーチャーした“オグリキャップ”の回も印象的でした。

僕らは、毎回新しい人を探して密着しているのですが、次第に“型にはまってきたのではないか”、“マンネリ化してきたのではないか”という声も聞かれてきたんです。

「プロフェッショナル―」は主に、仕事の流儀を紹介するパート、これまでの人生に迫る過去パート、現在進行形のドキュメント、という3部構成で出来ています。ですが、その形自体が、ある種マンネリ化しているのではないかという意見もあります。そこで、変わったことを、せっかくなら分かりやすいくらいに変わったことをした方がいいなと思ったんです。

まずは、今生きている方ではなく、各界のレジェンド的な存在で作ろうと決めました。過去、同じように藤子・F・不二雄さんを特集したことがあったので、今度は人ではなくてもいいのではないかという話になり、競馬好きのディレクターが、オグリキャップでやりたいと言ってきたんです。

ちょうどデビューから30年という節目でもあり、取材してみると“血統がすべて”と言われる世界の中で、血統や運命を乗り越えて勝っていく姿が、格差社会の現在にある種のメッセージを届けられるのではないかと思いました。

――こちらの反響はいかがでしたか?

これも、結構多かったですね。僕もツイッターの反応を拾いながら見ていたのですが、当時、生で見ていた人だけではなく、「競馬は知らないけど、お父さんが解説してくれて、よく分かった」とか、「当時よく分からないまま、父に競馬場に連れて行かれていたが、こういうことだったのか」とか、いろいろな世代がそれぞれの見方をしてくれたという意味で、成功だったのかなと感じます。

長寿番組の宿命!?「プロフェッショナル―」のマンネリ化とは?


――“マンネリ化”を指摘する声が届いたとのことでしたが、長寿番組ではある種の宿命とも感じます。大坪さんは、番組のマンネリ化についてどのように考えていますか?

僕は、この番組のスタイル自体を、まるっきり変える必要はないと思っています。でも、作り手が「『プロフェッショナル―』とはこうあるべきものだ」と思って作ってしまうと、多分飽きられます。

この番組は、元々、「きちんと人物を描く、長尺のドキュメンタリーを作れる場を作ろう」というのが基本精神なんです。だから、あくまで、取材対象の方の人生や仕事ぶりを描く上で、「プロフェッショナル―」という枠が最適であれば、そうする。そういうスタンスです。

それに、テーマ曲の「progress」と、橋本さとしさん、貫地谷しほりさんのナレーション、僕らが“黒ポン”と呼ぶ、黒地に白文字が浮かぶ演出があれば、「プロフェッショナル―」だと分かるくらいのブランドイメージは付いている。だから、極端な話、3部構成のうちの過去パートが必要なければなくてもいいし、現在進行形のドキュメントが面白ければ、頭から一本調子でもいい。そういったところは、もっともっと柔軟に考えていきたいと思います。

――最後に、番組に関わってきた中で、プロフェッショナルに共通するもの、視聴者を引き付けているものは何だと感じていますか?

番組で取り上げたプロフェッショナルは300人以上になりますが、僕が経験した中では、共通点は3つですね。1つは諦めない強い精神力。2つ目は桁違いの集中力。そして3つ目は、現状に甘んじることなく、さらに自分を乗り越えようという気概です。

誰もが天才ではなくて、下積みをして額に汗して、悩みながらいろいろなものをひねり出していく姿が、見る人の共感を呼んだり、「自分も頑張ろう」と思わせたりするのではないかと思います。

一時期、「頑張っている姿をあまり見せたくない」、「さらっとやるのがかっこいい」という風潮がありましたが、今はまた、「格好悪くても、いいんじゃないか」という世の中の気分のようなものを感じます。そういう意味でも、これからも皆さんに共感してもらえるようなものを作りたいなと思います。