“朝ドラ”こと連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。劇中の時代は1980年代、3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)は高校3年生になり、条映太秦映画村でアルバイトをすることになった。ベテラン大部屋俳優・伴虚無蔵(松重豊)、新人大部屋俳優・五十嵐文四郎(本郷奏多)、ベテラン女優・美咲すみれ(安達祐実)やスタッフの人達と軽快なやりとりを繰り広げる川栄李奈について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する(以下、一部ネタバレが含まれます)
川栄李奈はじつに器用な人だなと感じる。
「破天荒将軍や…」とはじめて生で見る破天荒将軍(徳重聡)に驚きのあまりぽかーんとまあるくなる瞳と口。好きだった黍之丞シリーズにおゆみ役で出ていたすみれを意識していることに気づかれないようそっと見る仕草、企画担当の社員・榊原(平埜生成)の仕事を応援する表情、五十嵐への反抗的な眼差し…等々、自由自在に表情を操っている。
上白石萌音、深津絵里、川栄と3代ヒロインがつなぐ百年のドラマという壮大な企画の中で川栄には「カムカムエヴリバディ」の最終ランナーという重責を感じさせない軽やかさがある。
上白石が演じた初代ヒロイン安子は戦争という未曾有の出来事がのしかかり、深津演じる2代目ヒロインるいは母・安子との確執から家族というものへの不信感というか不安感に悩まされていた。
シリアスな背景をもっていたふたりに比べるとひなたが抱えているのは、やりたいことがみつからないという比較的のほほんとした悩みだ。
英語の勉強をはじめてもすぐに飽きてしまうし家の手伝いも全然しない。時代劇が好きで、漫画雑誌の連載を毎月楽しみにしているのんきな子・ひなた。
他者から「アホ」と言われるところもあるちょっと拔けたところもあるひなたを愛らしく演じることはむしろ難易度が高いのではないだろうか。
やりすぎるとあざとくなって好感度が薄まるところ、川栄はいい塩梅に演じている。川栄李奈自身はとてもクレバーな人だからこそほどよくおバカキャラが演じられるのだろう。
川栄はアイドルグループ・AKB48に所属していたころ、まさにおバカキャラ担当だった。ところが2010年から2015年までアイドルとして活動した後(あと)、俳優業にシフトすると実にしっかりした演技を披露し、求められることを正しく理解して的確に表現できる能力を感じさせた。つまりおバカキャラも演技だったのだろう。
初めての朝ドラは「とと姉ちゃん」(2016年度前期)で、ヒロイン(高畑充希)が居候する仕出し弁当屋さんの娘をきりっとかわいく演じていたが、川栄が朝ドラに向いているのではないかと筆者が感じたのは同じくNHKのドラマ「夕凪の街 桜の国2018」のヒロインを見たときだった。
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