俳優・比嘉愛未が主演を務める映画「吟ずる者たち」が広島先行後、3月25日(金)より東京はじめ全国順次公開される。比嘉へのインタビューで、同作で描かれた古き良き時代の人々の温かさに対して感じたことを聞くとともに、流れに身を任せつつも常に挑んでいたいという、穏やかでありながらストイックな彼女の俳優論に触れた。
酒造りを軸に、モノ創りに励む全ての人に感動を届ける同作。比嘉は、東京で夢破れ故郷の広島での酒造りに引かれていく永峰明日香を演じる。令和の主人公・明日香と明治の主人公・三浦仙三郎(中村俊介)が、時代を越えて酒造りへの熱い思いを紡ぐ感動作となっている。
――全編広島ロケで撮影されたとのことですが、酒蔵に行った印象を聞かせてください。
良い意味で時が止まっていると言いますか、「本当に現代なのかな」というぐらい酒蔵の良さがそのまま残っているんですよね。タイムスリップしたかのような感覚になれて、すごく居心地が良かったです。本当に圧倒されました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
今回は油谷誠至監督のチームということで、私も以前にご一緒した「飛べ!ダコタ」(2013年)という作品とほぼ同じスタッフの方たちだったんです。久しぶりにお会いできたのもうれしかったですし、本当に心地良く撮影できました。
皆さん、私が生まれる前から日本の映画を作っているような巨匠の方々ばかりでしたので、またこうしてご一緒できて、主演という立場で立たせていただけることは、本当に毎日が贅沢な時間でしたし、かみ締めながら撮影をしていました。
――演じた明日香とご自身の共通点、相違点があれば教えてください。
人生をちょっとだけ立ち止まって「このままでいいのかな」と考えてしまうところは、私自身もなくはないな、と思いました。今はありがたいことに夢を追いかけてきて、自分が好きなこのお仕事をさせていただけていてとても感謝しているんですが、「この先どうなっていくのかな」とか「自分はどう進化したらいいんだろう」と考えることもあるんです。
例えば、地元に帰ったら同世代の友達たちはもう結婚して、子供も大きいんですよね。そういうものを目の当たりにすると、ふと「あれ、私ってこのままでいいのかな」と思ってしまったりするんです。
明日香もきっと、立ち止まって挫折して、地元に帰った時に、一回ゼロに戻ったんですよね。そういうところはすごく共感できました。ネガティブな意味ばかりではなくて、一回立ち止まってゆっくり俯瞰で見て、自分は何がしたくて、本当は何が好きで、何が嫌いなのか。自分で確認しないでただただ流されているままだと、見失いがちになってしまうと思うんです。
――明日香にとっての酒作りのように、比嘉さんが現在の俳優業を天職だと感じるのはどんな時ですか?
「天職」と自分では思えないんですが、お仕事は好きです。作ったものは届けられないと意味がないので、それは客観的に見ていただくことだと思っています。無事に作品が届けられて、お客さまから反応があって「届けられた」と感じられる時に「やっていて良かったな」と思います。
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