<フィッシュマンズ"HISTORY Of Fishmans"[Day.2] 1995-1998>「好きな曲しかない!」“王道”のセットでバンドの進化を見せつけたライブを完全レポート

2022/03/08 17:00 配信

音楽

3月2日に開催されたフィッシュマンズ "HISTORY Of Fishmans"[Day.2] 1995-1998 写真:西槇太一(※提供写真)

フィッシュマンズのデビュー30周年を記念したワンマンライブ“HISTORY Of Fishmans”が、3月1日と3月2日の2日間にわたって東京・恵比寿のLIQUIDROOMにて開催された。今回は、「フィッシュマンズ"HISTORY Of Fishmans"[Day.2] 1995-1998」と題した二日目の模様をレポートする。


バンドの飛躍、そして『男達の別れ』へと向かう中で生まれた珠玉の名曲たち


前日に開催された「フィッシュマンズ"HISTORY Of Fishmans"[Day.1] 1991-1994」では、バンドの初期から中期に位置づけられる楽曲の中から、近年のライブではほとんど披露されることのない貴重なナンバーを次々と演奏し、現地や配信を通してライブを見たファンを大いに喜ばせたフィッシュマンズ

この日に演奏されるのは、彼らがポリドール(※現ユニバーサル・ミュージック)へレコード会社を移籍した1995年以降――つまりは「ワイキキビーチ/ハワイスタジオ」と呼ばれるプライベートスタジオを獲得し、音楽性の進化/深化が加速度的に進んだ時期の楽曲たち。

2021年公開の「映画:フィッシュマンズ」を見た人にはよく知られている話だが、それ以前のフィッシュマンズが置かれていた状況は決して順風満帆とは言い難く、このポリドールへの移籍をきっかけに彼らを取り巻くあらゆることが好転していく。

そんな中で生み落とされたのが、日本のロック史に刻まれた大傑作『空中キャンプ』(1996年)や、後に『空中キャンプ』とともに“世田谷三部作”と称される『LONG SEASON』(1996年)、『宇宙 日本 世田谷』(1997年)といった作品群。

この時期に生まれた楽曲たちが無ければ、今日における彼らの評価もまた違ったものになっていたはずで、ある意味では彼らの運命を切り開いた楽曲と言えるかもしれない。そしてそれらは、近年のライブを通してより強固に練り上げられてきた。

一方で、この頃はバンドが一つの「終着点」へと向かっていく時期でもあった。彼らの「物語」を知る者としては、それぞれの楽曲がより深く心に突き刺さってしまう部分も。果たして今回はどのような演奏を聞かせてくれるのか、世界中のファンは高い期待を胸にライブへと臨んだ。


いきなりバンドの“最新曲”からスタート!


SEで原田郁子の歌う“Future”が流れる中、茂木欣一(Dr./Vo.)、柏原譲(Ba.)、HAKASE-SUN(Key.)、木暮晋也(Gt.)、関口“dARTs”道生(Gt.)、原田(Vo.)がステージに登場。各自のスタンバイが整ったところで、関口がアルペジオを奏でだすと、観客からは驚きとともに大きな拍手で応える。

この日の幕開けを飾ったのは“A piece of future”。1999年に急逝した佐藤伸治の存命時にはリリースされていない楽曲で、2005年のベストアルバム『宇宙 ベスト・オブ・フィッシュマンズ』に初収録された「現時点での最新曲」だ。

2011年には、多くのゲストミュージシャンが参加した「FISHMANS+」名義で新たに20分超えの大作としてリリースされたが、この日はベスト盤収録のライブテイクに近い形で演奏。そんな中、後半では原田がFISHMANS+バージョンのリリックで歌うなどハイブリッドなアレンジを展開し、冒頭から観客のボルテージを高めていく。

そこから間髪入れずに“すばらしくてNICE CHOICE”へなだれ込む。前日よりも明らかに「前」に出てきた柏原の分厚い低音がグイグイとグルーヴを牽引する中、「何だかやられそうだよ♪」と歌う茂木に対し、観客たちは「こっちのせりふだよ!」と言わんばかりに体を揺らす。

次の曲は“MAGIC LOVE”。リリース当時すでにバンドを離れていたHAKASEの奏でる音が軽やかに響きわたり思わずグッときてしまう。また、キーボードで弾いているとしか思えない音色で魅せる関口のソロパートも印象的。終盤、木暮と関口が(もはやガンを飛ばし合うかのように)ユニゾンで弾く場面は、早くもこの日のハイライトの一つとなった。