劇中作のクオリティも圧巻! アニメ制作への情熱を描く映画『ハケンアニメ』のアツさ

2022/05/16 11:30 配信

映画 アニメ コラム

ひとつのゴールに向かうために大切なことは何かを考えさせられる


『サウンドバック 奏の石』最終話のラッシュチェックに向かう斉藤監督一同。物語の結末は!? (C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

アニメ監督として一世一代のチャンスを掴んだ斎藤は、気持ちばかりが先行し、最初は現場をまとめられない。撮影監督に「具体的に数字で言って」と言われるが、作画監督には「数字で言わないで。演技はパッションだ」と言われる始末。斉藤は最初は戸惑い、ストレスに感じていたが、不器用ながらも必死に考え答えを出していく。

アニメ制作現場だけでなく、どんな仕事であっても、ひとりではできない。必ず誰かと繋がり、誰かと協力しながら、ひとつの仕事が成し遂げられていくものだ。本作では、アニメ完成というひとつのゴールに向かって、様々な立場や違う感性を持つ人と、どう向き合えばいいのかも考えさせられる。

昨今「刑事」「医者」「弁護士」「先生」など、お仕事をテーマにしたドラマや映画は人気を博している。どの作品も、その仕事にかける想いはアツく心に響く。本作のアニメ制作にかける想いも、並々ならぬものを感じた。作品からあふれ出すアニメへの熱い想いから、「自分自身の“好き”なものに対して、妥協せずに真っ直ぐに向き合っていいんだ」と思えるからかもしれない。

企画立ち上げからクランクインまで7年! 最大の難関は劇中アニメ制作


「好き」をつらぬく映画『ハケンアニメ』のポスタービジュアル。 (C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

原作は直木賞・本屋大賞受賞作家である辻村深月の同タイトル小説。2012年より女性誌『anan』にて約2年間連載され、2014年には書籍化。本屋大賞第3位にランクインした話題作だ。

映画化での最大の難関は、劇中アニメ制作だった。小説でも細部まで描写を徹底した作品の要なため、プロのクオリティで作ることは必須。しかしアニメ制作現場は、数年単位でスケジュールが抑えられ、人気のスタッフやスタジオは早く予定が埋まっていく。企画の立ち上げからクランクインにたどり着くまで、7年の月日が経っていたという。

劇中アニメは、原作者の辻村が企画・脚本開発段階から意見を提供したり、アニメ制作陣がより具体的に作品のイメージができるように、2作品24話(1作品12話完結)のプロットも手がけた。制作には『攻殻機動隊』シリーズなどで知られるProduction I.Gをはじめ、日本を代表するアニメプロダクションやトップクリエイター陣が参加し、東映アニメーションが監修を手がける。

本作は、業界の舞台裏に密着したドキュメンタリーでもあり、痛快な群像劇でもあり、夢に向かって突き進むサクセスストーリーでもある。映画で描かれるアニメ制作への情熱は、この作品にも注がれている。