ーーこの作品がドラマとなって放送されることについて、今の率直な感想や期待をお聞かせください。
10年以上前に刊行した作品ですが、その後も継続的に読まれ続けていて、多くの読者が、自らの存在の深い場所でこの物語を受け止めてくれています。それは、小説家としての何よりの幸福です。ドラマ化の決定は、思いがけない喜びで、素晴らしい俳優の皆さんと製作スタッフに恵まれ、期待に胸を膨らませています。ドラマを通じて、一人でも多くの方に、本作が届くことを願っています。
ーーもしドラマのように、自分の愛する人が生き返ったら?
とにかく、話がしたいですね。人間が生き返る、というのは、突飛な設定ですが、愛する人が亡くなった時、遺された人たちが最も強く願うことはと考えると、やはり「もう一度会いたい、会って話がしたい」ということに尽きると思います。単純ですし、絶対に叶わないことですが、しかし、これに勝る思いはないでしょう。言葉が、そこではたとえようもなく重要であり、自分の存在のすべてを何とか表現しようとすると思います。だからこそ、文学の主題になります。
ーードラマ放送直前となりましたが、視聴者の方に向けて、メッセージをお願いします!
生きることには、喜びと悲しみとが両方備わっていて、その間には陰影に富んだグラデーションがあります。私自身は、生の孤独が極まってゆくような感覚の中で、何度となく文学作品に救われてきました。敢えて言えば、文学はそうした精神的な糧を求めている人たちにとっては、立派に「役に立つ」ものです。そしてそれは、私たちの感じている孤独が、決して孤独なものではなく、他者と共有可能なものであることを教えてくれます。これは、生きることの希望を取り戻すための物語です。