──今回お2人が共演する舞台『スルメが丘は花の匂い』。脚本を読んだときどう感じられましたか?
吉岡 現代に生きる人が物語の世界に入り込むという、お話の主軸はベーシックなのですが、出てくる言葉や間合いが(岩崎)う大さんらしくって独特だなと思いました。同時に、すごく難しそうだなとも思いました。この面白さを成立させるのには、間合いの取り方、演者側の力量や感覚が必要とされるだろうなって。実際に稽古が始まってみると、予想通り難しいですが、うまくいったときにのみ起こる奇跡みたいなものがあるなということに気づいて、やりがいを感じています。
鞘師 最初は「こんな世界観って存在するんだ」と驚いて、でも最後には伝えたいことが真摯に伝わってくる、幅の広い作品だなと感じました。稽古をしていく中で、吉岡さんもおっしゃっていたように“ここでしかできないもの”が出来上がっていっている感覚があります。毎公演でこれを作り上げないといけないと思うと怖くもありますが、楽しい舞台になるなとワクワクしています。
──作品の見どころを教えてください。
鞘師 見ている方がそれぞれ、緑を自分に投影しつつ、一緒に不思議な世界に迷い込めるような作品になっていると思います。クロエとしては、そのファンタジー感を皆さんに届けられる役割でいたいですし、帰る頃には心の中に何かを得てもらえるように頑張りたいと思います。
吉岡 かもめんたるの岩崎う大さんが演出ということもあり、ここでしか味わえないような笑いがポッと咲くような作品になっています。同時に、物語の主軸にはすごく素敵なメッセージも込められていて。軽やかに楽しめる、かつ、ちゃんとお土産も持って帰れる舞台になっていると思います。
──本作で、吉岡さんは物語の世界に迷い込んでしまった会社員の緑を、鞘師さんは「スルメ姫」という物語の主人公として生まれた少女・クロエを演じます。それぞれご自身の役をどのようなキャラクターだと捉えて演じていますか?
吉岡 緑はごくごく普通。すごく良い人でもなければ、すごく悪い人でもない。なので、演じる上では、普通でいるということを一番大事にしています。周りは個性的な人たちばっかりで、みんなボケ倒しているので(笑)、現代人としてちゃんとツッコんでいきたいなと。あとはネアカであること。緑って何事にも動じないんですよね。物語の世界に突然やってきたのに、10分くらいで「この世界でどうにかやっていこう」みたいなマインドになっている。その飄々とした感じが面白いなと思ったので、そこも大切にしています。
──鞘師さんからみて、吉岡さんが演じる緑はいかがですか?
鞘師 普通でいることを意識されているとおっしゃっていましたが、本当に、お話させていただいている延長みたいな感じで。物語の中にそのまま、スコンと入ってくる感じが面白いです。
──ではご自身のクロエは、どのようなキャラクターだと捉えて演じていますか?
鞘師 クロエは物語の中でスルメ姫になると運命付けられている女の子。みんなの期待に応えなきゃというプレッシャーと、自分の気持ちで葛藤しているので、その心の動きを丁寧に描くようにしています。緑のストーリーがメインで描かれていますが、クロエのストーリーもちゃんと表現できたらいいなと。
──吉岡さんからみた、鞘師さんの演じるクロエはいかがですか?
吉岡 まず守ってあげたくなります。緑はクロエと初めて会ったときからたぶんずっと、クロエの幸せを願っているんですよね。なぜかそういう気持ちにさせられてしまう。あと、クロエは周りからと「スルメ姫、スルメ姫」と持ち上げられて、腫れ物に触るように大事に扱われるんですけど、クロエ自身は実はもっと自由な女性で。自分自身で未来を切り開いてきた鞘師ちゃんが演じるからこそ、そんなクロエを素敵に表現できるのかなと思っているんです。鞘師ちゃんの実体験かはさておき、共感して出てきているセリフなんじゃないかなと思うセリフがいくつもあります。
鞘師 うれしいです。
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