――お二人で夫婦を演じると知った時はどんなふうに思いましたか?
仲野:何も心配要らないなと思いました。僕が何もしなくても沙莉ちゃんがいてくれれば絶対に良くなるという確信がありましたし、初共演でしたけど、きっと合うだろうなという予感はあったので、初めて現場で会ってもすっと寄り添うことができました。初共演という感じはしなかったよね?
伊藤:しなかったですね。勝手にホッとしていました。安心するということなんですけど、何もしなくても大丈夫だし、何をやっても大丈夫だっていう思いがありました。
仲野:それはありましたね。
伊藤:その安心感が一番大事で、私はもともと自分から仕掛けるタイプではないんですけど、どう転んでも受け止めてくださるという勝手な信頼があったんです。それが交差している実感があったからとても自由に楽しくできました。
――脚本に書かれていること以外のものが現場で生まれたことはありましたか?
仲野:何だろう。山ほどあるような気もするし…。
伊藤:意外と沿っていたような気もしますよね。動作とかを付け加えるというよりは、もともとあるものが膨らんでいった感じだと思います。
仲野:台本で描かれている以上のものには確実になっているはず。
伊藤:井上監督にもそうなんですけど、結構太賀さんにも相談させていただいたことがあって。「ここどう思います」とか「こういうふうに思っちゃうんですけど、それってどうですかね」とか。その時に嫌な顔一つせず「ああ、そうかそうか」って一緒に考えてくれたり、助言をくださる時もあって。
すごく覚えているのは夫婦で大ゲンカするシーンを撮影している時に「この人、マジで一休さんや」って思った瞬間があったんです。お互いの境界線を大事にしたいという監督の意図があって、それをどうするかってなった時に私は動けなくなってしまったんです。
ここから先は諭のことを入れたくないって思ったら、自分もそこから離れられなくなっちゃって。でも、監督は私に動いてほしいんです。私自身、思考が止まってしまいどうしようってなっている時に太賀さんからアドバイスを頂いたんです。それがとてもシンプルで。言い回しは違ったかもしれないですけど「ここに入れたくないなら出せばいい」だったかな? 向こうが入ってきたとしても出ればいんだということを教えてくれたんです。
仲野:どうやって入るかということを考えていたんだよね。
伊藤:そうです。諭が入って来た後にどうするかってことを。
仲野:でも、そうじゃなくてどうやって出るかを考えた方がいいんじゃないかって。言葉にすると分かりにくいかもしれないですけど、そんなようなことを話しました。
伊藤:どうやって動いたらいいか分からなくなっていた私にとっては、間違いなく一休さんでした(笑)。結局、2人は別々の空間でという形で終わることができて。あのシーンは太賀さんが作り上げたんじゃないかなと思っています。
――現場で共演者から相談されることは意外でしたか?
仲野:とても新鮮でした。だから「えっと、これはどうしよう」とか「こういうのいいんじゃない?」って、僕もいきいきしちゃいました(笑)。
――仲野さんは相談しやすかったんですか?
伊藤:聞きたい人だから聞いたって言う感じです。
仲野:この出来事は一生忘れません(笑)。
伊藤:今後もすごい相談されますよ(笑)。
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